新型コロナという「人類史上の厄災」を、どう未来に伝えるべきか
Archiving the Pandemic

歴史家や作家はスペイン風邪の記録にコロナと向き合う手掛かりを求めた AKG-IMAGES/AFLO
<激動の記録を保存しようと全米でアーカイブが発足、日記や写真が市民から続々と寄せられている>
生活や思いをつづった日記、マスク姿の郵便配達員を描いた絵に、トイレットペーパーをかたどったバースデーケーキの写真。どれも人々がコロナ禍の象徴に選んだものだ。
「現在進行形のこの劇的な出来事を、どう記録し保存すればいいのか──。新型コロナウイルスの感染爆発が起きたとき、まず頭をよぎったのがこの疑問だった」と、インディアナ大学ブルーミントン校のサラ・ノット教授(歴史学)は振り返る。
ノットはアーキビスト(公文書館などで記録の収集、査定、保管を行う専門職)のキャリー・シュワイアーと組んでアーカイブを立ち上げ、地域住民と大学関係者に日記の提供を呼び掛けた。同様のプロジェクトは、全米で始まっている。
この1年、コロナ禍のみならず、BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動や大統領選で揺れに揺れたアメリカ。各地の大学や図書館、歴史協会は、こうした出来事に関する資料のアーカイブ化を進めてきた。資料とは、地域の人々から寄せられる写真や文章だ。
地域ごとのアーカイブ作りが盛んになったのは1960〜70年代だと、司書のスザーン・イムは解説する。
イムはロサンゼルス公共図書館で「LA・COVID-19・コミュニティー・アーカイブ」を運営。「昔は専門家が保存する資料を選定した。だが地域社会のアーカイブに関しては、アーキビストだけでなく提供者が資料を選ぶケースが増えている」と語る。
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が発生して以来、歴史家や作家は疫病に対する社会の反応を知ろうと、歴史にヒントを求めてきた。