アングル:アマゾン熱帯雨林は生き残れるか、「人工干ばつ」実験で限界試す
ブラジル、アマゾンの熱帯雨林。温暖化で到来が予想されている極端な乾燥に森がどこまで耐えられるかを試す実験が行われている。写真はブラジルのマナウスのアマゾン熱帯雨林。2022年10月、マナウスで撮影(2025年 ロイター/Bruno Kelly)
Andre Cabette Fabio
[ケレンシア(ブラジル)4日 トムソン・ロイター財団] - ブラジル、アマゾンの熱帯雨林。樹木の最上部の層(林冠)のすぐ下に、数百枚の透明なプラスチックの板が張り巡らされた1ヘクタールの区画がある。降り注ぐ雨の半分を遮り、人工的に干ばつ状態を作って、温暖化で到来が予想されている極端な乾燥に森がどこまで耐えられるかを試す実験が行われている。
昨年始まったこのプロジェクトの名はポルトガル語で「セカ・リミチ(極限干ばつ)」。世界最大の熱帯雨林の南東の端に近いケレンシア市がその現場だ。幹の間に取り付けられたプラスチック板で雨を集め、木製の樋で別の場所へ流している。実験にあたる科学者らは、入院患者を診察するかのように、61本の樹木の樹液と二酸化炭素の流れ、呼吸、温度などの「バイタルサイン」を、太陽光発電の機器で測定している。
「毎日、脈と呼吸を測っている感覚だ」と、英リーズ大の陸上生態系科学教授で実験の主任研究者の一人、デビッド・ガルブレイス氏はワイヤーで囲まれた森を歩きながら語った。
チームはまた、深さ6メートルの穴を使って樹幹のサイズと土壌データを追跡し、網で落ち葉を集めている。人工知能(AI)搭載ドローンが森林の3Dモデルも作成している。
アマゾン全域で、気候変動や森林破壊、劣化により森林の乾燥が進んでいる。科学者はこの地域の一部が「臨界点」に達しつつあると懸念している。これを越えると、少なくとも人間の時間の尺度で計れる間に、熱帯雨林が回復することは不可能な状態になってしまう。
アマゾンのこの地域は、隣接する熱帯サバンナ「セラード」に近く、他の地域より乾きやすくて暑く、人間の活動も盛んだ。
「ここは気候変動の最前線だ」と、パラー連邦大学の地質科学教授で実験の共同リーダーを務めるアントニオ・カルロス・ローラ・ダ・コスタ氏は言う。同氏は「一方では大規模農業が進み、もう一方ではアマゾンが抵抗している」と述べた。
<記録的な山火事>
11月10日からアマゾン川河口の都市ベレンなど3都市で国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)が開催される。会議では、ブラジルの広大な熱帯雨林をいかに安全範囲内に維持するかが議論の中心になる見通しだ。熱帯雨林の60%がブラジルにある。
科学者は、森林破壊や山火事、生物多様性の喪失によって、森は劣化し、木の少ないサバンナに変わってしまうのではないかと懸念している。
昨年、学術誌「ネイチャー」に掲載された研究は、2050年までに森林の10%から47%が他の生態系に劣化する危険にさらされていると結論づけた。多数の木が腐ったり燃えたりすると、大気中に大量の二酸化炭素が排出され、気候変動がさらに加速することになる。
すでにアマゾンの回復力が失われつつある兆候はある。
アマゾンの熱帯雨林は21世紀に4度の深刻な干ばつに見舞われ、昨年は記録的な山火事を引き起こす一因となった。
世界気象機関(WMO)の10月の報告書によると、24年の大気中の二酸化炭素濃度の上昇幅は、近代的観測の開始以来で最大だった。原因は、世界の気温の記録的な上昇のなかで、山火事や干ばつ、そして海水温の上昇により、森林や海が炭素吸収源として機能する能力が低下したためと考えられるという。
<森を壊す>
過去3000年間、アマゾンの森林は急速に南へと拡大してきた。だが1970年代にブラジルの軍事政権が道路建設と入植計画を開始すると、森林破壊率は爆発的に上昇。「ブラジルでは、森を焼き払い占拠しさえすれば、誰でも土地を得られた」と、干ばつ実験プロジェクトの共同リーダーを務めるマットグロッソ州立大学の研究者、ベン・ハー・マリモン・ジュニア氏は言う。
ベン・ハー氏と、彼の妻であり同僚の生態学教授ベアトリス・マリモン氏は、森林伐採の最前線にあるこの森林を30年にわたって測定してきた。
「1994年に測定を始め、15年後、あまりに多くの木が枯れ始めたのを見て恐ろしくなった」と、実験の主任研究員の一人であるベアトリス氏は言う。
夫妻が収集したデータは20年のネイチャー誌の論文に掲載され、南東部の地域の樹木の枯死率がアマゾンの中で最も高かったことが示された。
<より乾燥した熱帯雨林>
マリモン夫妻が90年代から測定してきたノバ・シャバンチーナ市の調査区画の入口には、「釣り・狩猟禁止」と記した銃弾で穴だらけの標識が立っている。
森の中に入ると、ベン・ハー氏が幹が腐り始めた高さ30メートル超の木を指さす。「あの木は樹齢300年を超えるが、次の世紀まではもたない。こういう巨木から先に死ぬ」。近くには、すでに葉を落として枯れた巨木もあった。
ベアトリス氏によれば、樹木は極端な干ばつを1年経験しただけでシロアリなどに侵されやすくなり、次の干ばつで倒れる確率が跳ね上がるという。
深刻化する干ばつと人為的に発生した山火事の相互作用も重要だ。地図を作成する団体「マップバイオマス」が収集した過去40年間のデータでは、昨年、アマゾンの森林火災の焼失面積はこれまでの2倍に達した。
それでも、わずかな希望は残る。
アマゾン北部で行われた別の乾燥化実験では、最初の15年で森林の3分の1が失われたが、その後は樹木の枯死が安定化した。森は林冠が薄くなり樹高が低くなるなど新たな現実に適応して、森としての姿は保たれた。
しかし、今回の実験は、より暑く乾き、大豆畑や牧草地で森の断片化が進む南東部で行われている。結果は異なるかもしれない。
ベアトリス氏は、地球規模の気候変動よりも、むしろ開墾や焼き畑などの人間の開発行為のほうが差し迫った脅威だと語る。
「人々は気候の臨界点にばかり気を取られて、人間の臨界点――すべてをなぎ倒すトラクター――を忘れている」。そして付け加えた。「トラクターに倒された森は、1000年経っても同じ姿に戻ることはない」
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