最新記事

アフガニスタン

迫る米軍のアフガン撤退 40年戦争の「正しい」終わらせ方

Leave Afghanistan As Planned

2021年3月31日(水)11時58分
マイケル・クーゲルマン(ウッドロー・ウィルソン国際研究センター上級研究員)
アフガニスタンから帰国した米兵(フォートドラム)

9カ月間のアフガン派遣から帰国し、荷物を降ろす米兵(2020年12月、ニューヨーク州フォートドラム) JOHN MOORE/GETTY IMAGES

<撤退期限を5月1日に控え、駐留延長かアフガニスタンの不安定化かで揺れ動くバイデン政権に求められる決断>

ジョー・バイデン米大統領の政権は、アフガニスタンの長年の泥沼からついに抜け出すことができるのだろうか。

新政権が誕生したとき、バイデンはアフガニスタン政策について究極の選択を迫られていた。昨年2月にトランプ前政権が反政府勢力タリバンと合意したとおり、5月1日までに約2500人の駐留米軍を完全撤退させ、アフガニスタンが不安定化するリスクを取るのか。もしくは5月1日の期限後も駐留を続けることでタリバンのほうから合意を破棄され、アフガン政府とタリバンの間でようやく始まった和平プロセスを断念するのか──。

バイデン政権はこのジレンマを回避しようと、別の2つの選択肢を模索してきた。1つは、5月1日の期限を短期的に延長して時間を稼ぎ、今よりもリスクを軽減した状況で和平交渉に持ち込み最終的な撤退を目指すやり方。もう1つは、タリバンとアフガニスタン政府から暴力低減についての合意を引き出しつつ、政治的な解決策を探るべく新たな和平計画を数週間以内に提案することだ。

どちらもやってみる価値はあるが、実現させるのはほぼ不可能に近い。加えて、2つのうち1つでも達成するには大きな労力が必要とされ、二兎を追う者は一兎も得ずという結果になりかねない。従ってバイデン政権は、うまくいかない場合にはできるだけ早い時期に米軍を撤退させるべく計画を練るべきだ。

残念ながら、最近の報道によればバイデン政権は米軍駐留を今年11月まで続けるつもりのようだ。タリバンが撤退延期に合意したり、米政権がタリバンにそう提案した兆候はなく、アフガン政府もタリバンも延期に賛成していないにもかかわらず、だ。そしてこの5月1日以降も一方的に居座る、というのは最悪の選択肢だと言える。

タリバンはこれまで、最終的な目標は全ての外国軍を追い出すことだと主張してきた。撤退延期には、多くの見返りを要求されるだろう。例えば拘束されたタリバン戦闘員の解放や、国連によるタリバンへの制裁解除、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領が全面的に拒否しているタリバンを含む暫定政権の設置などだ。

仮にアメリカとアフガン側が撤退延期に合意したとしても、期間はせいぜい数カ月間だ。タリバンはそれ以上の延期は認めないだろうから、アメリカとアフガンはたった数カ月間のために今後の死活的な交渉材料を失うことになる。

その上、米政権の新たな和平計画にはアフガン政府とタリバンの双方にそれぞれ受け入れられない点がある。まず、暫定政権の設置。また、タリバンには最終的な休戦と、自由で公正な選挙、女性の権利を保障する憲法の制定を求めているが、彼らはこれら全てを明確に拒否するか支持を拒んできた。アフガン政府とタリバンがこれらの争点に短期間で合意に達するのは難しい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井住友FG、インド大手銀行に2400億円出資 約

ビジネス

米国は最大雇用に近い、経済と労働市場底堅い=クーグ

ビジネス

米関税がインフレと景気減速招く可能性、難しい決断=

ビジネス

中国製品への80%関税は「正しい」、市場開放すべき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中