最新記事

日英関係

英国は日本を最も重視し、「新・日英同盟」構築へ──始動するグローバル・ブリテン

2021年3月16日(火)17時55分
秋元千明(英国王立防衛安全保障研究所〔RUSI〕日本特別代表)

日英が「同盟国」と呼び合うのは、およそ100年ぶり

そして、そのために英国が最も重視した国こそ、アジアの最大の友好国、日本であり、日本との関係を同盟関係に引き上げることだった。そして、その行動は迅速に行われた。

演説からおよそ2週間後の8月31日、メイ首相は日本を訪問し、安倍晋三首相(当時)と会談した。アジア諸国歴訪の一環でもなく、国際会議参加のためでもなく、ただ、日本の安倍晋三首相と会談するためにわざわざ日本まで出向いたのである。

そして、日本と英国は東京で日英安全保障共同宣言を発表した。宣言では、日本の安倍首相が提唱する「積極的平和主義」と、英国のグローバル・ブリテン構想を整合させ、日英がグローバルな戦略的パートナーシップを構築し、それをさらに次の段階に引き上げることなど、17の項目で合意した。

パートナーの関係を次の段階に引き上げることの意味について、日本の河野太郎外相(当時)は記者団に対して次のように説明した。

「首脳会談は大変よく、うまくいったと思っております。また合意文書も出すことができました。今までのパートナー国から同盟国へという形で関係を強化していこうということになりました」

一方、英国のメイ首相はNHKのインタビューに応えて次のように述べた。

「イギリスと日本は両方とも海洋国家です。私たちは両方とも外向き志向の国です。私たちは民主主義や法の支配を尊重し、人権を尊重します。その点では、私たちはとても似た見解を持っています。私たちは自然なパートナーであり、自然な同盟国だと思います」

日英のリーダーが互いを「同盟国」と呼び合うのは1923年に日英同盟が解消して以来、およそ100年ぶりのことであった。それ以来、日本との新たな同盟の構築は英国の戦略の一部となり、英国政府は外交文書や公式ツィッターなどでは、一貫して日本をパートナーではなく、「allies(同盟国)」と呼ぶようになった。

現代の同盟は、かつての軍事同盟とは大きく異なる

ただ、ここで確認しなくてはならないのは、「『同盟』とはいったいなにか」ということである。

実は、同盟の固定した明確な定義は存在していない。専門家の間でも自国の領域を守るため侵略に共同で武力行使する関係とする古い解釈と、安全保障のあらゆる分野で平和時から協力し合う関係とする新しい解釈が併存している。

ただ、確実に言えることは、現代は平和でもなければ戦争でもないグレーな時代であり、同盟はこのグレーな時代に有効に機能するものでなくてはならないということである。

実際に武力衝突が起きていなくても、サイバー空間を利用したサイバー戦や、軍事と民間が共同して外国への浸透工作を行うハイブリッド戦、大国同士の覇権をかけた情報戦が日々、見えないこところで熾烈に繰り広げられている。侵略への共同対処を同盟の条件にするのは現実的ではない。

ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小反発、円安と米株先物高が支え

ビジネス

仮想通貨を取引しているのは機関投資家の10%、JP

ワールド

米上院超党派グループ、インフラ計画でバイデン氏と2

ワールド

新規感染拡大続けば対策強化、専門家と適切に判断=西

MAGAZINE

特集:ファクトチェック 韓国ナゾ判決

2021年6月29日号(6/22発売)

慰安婦と徴用工の裁判で正反対の判決が── 「大人」になった韓国世論と政治が司法を変えたのか?

人気ランキング

  • 1

    インド、新たな変異株「デルタプラス」確認 感染力さらに強く

  • 2

    トルコの海を覆い尽くす「海の鼻水」...茶色い粘液の正体は?

  • 3

    アボカドは「悪魔の果実」か?──ブームがもたらす環境破壊と難民危機

  • 4

    G7の英コーンウォールで2450%増の感染爆発 人流増で…

  • 5

    イスラエルが航空機搭載のレーザー兵器でブレイクス…

  • 6

    「ワイン離れに歯止めがかからない」 フランス人が代…

  • 7

    コロナ研究所流出説を裏付けるコウモリ動画

  • 8

    「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型…

  • 9

    インドの「スーパースプレッダーイベント」、虚偽の…

  • 10

    女子学生を美醜でランク付けした中国「アート」作品…

  • 1

    最愛の人の「生前の姿」をGoogleストリートビューで発見した人たち...その感動と特別さ

  • 2

    あなたがダイエットに失敗するのは内臓脂肪を燃やす栄養素を制限しているから

  • 3

    オーストラリア、一面クモの巣で覆われる

  • 4

    「ワイン離れに歯止めがかからない」 フランス人が代…

  • 5

    BTSだけじゃない! 中国を怒らせた「出禁」セレブたち

  • 6

    やっぱり危ない化粧品──米研究で半分以上に発がん性…

  • 7

    閲覧ご注意:ネズミの波がオーストラリアの農地や町…

  • 8

    「残業時間別」で見た日々の暮らしと仕事のリアル 10…

  • 9

    徴用工訴訟、ソウル地裁の却下判決 韓国法曹会は正…

  • 10

    本気で国の未来をビットコインに賭けたウクライナ...…

  • 1

    4000回の腕立て伏せを毎日、1年間続けた男...何を目指し、どうなったのか

  • 2

    脳が騙される! 白黒の映像が、目の錯覚でフルカラーに見える不思議な体験

  • 3

    国際交流で日本にきた中国人200人に「裏切り者」のレッテル

  • 4

    最愛の人の「生前の姿」をGoogleストリートビューで…

  • 5

    デーブ・スペクター「日本は不思議なことに、オウン…

  • 6

    閲覧ご注意:ネズミの波がオーストラリアの農地や町…

  • 7

    あなたがダイエットに失敗するのは内臓脂肪を燃やす…

  • 8

    オーストラリア、一面クモの巣で覆われる

  • 9

    東京オリンピックの前向きな中止を考えよ

  • 10

    武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月