最新記事

中国

習近平国賓来日は延期でなく中止すべき

2021年3月2日(火)17時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
習近平

習近平国家主席(2020年9月8日) Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

政府は習近平の国賓招聘を再延期するようだが、延期ではなく中止すべきだ。全世界をコロナ禍で苦しめている事実だけでなく、尖閣諸島領海侵犯、海警法制定などを容認したことになり、中国への応援につながるからだ。

コロナ禍をもたらした中国の情報隠蔽体質

2020年1月27日のコラム<「空白の8時間」は何を意味するのか?――習近平の保身が招くパンデミック>や2020年1月31日のコラム<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす>で書いたように、習近平国家主席はWHOテドロス事務局長とタイアップして全世界に対して緊急事態宣言を出すのを遅らせようと工夫した。それは中国の体面を保つための偽装工作であり、情報隠蔽でもあった。

なぜ隠蔽工作をするのかと言えば、それはひとえに一党支配体制を維持するためであり、この精神は中国全土の地方政府にも染みわたっている。

2020年1月24日のコラム<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>に書いたように、武漢市や湖北省の高官たちは、全人代(全国人民代表大会)の地方版である(湖北省)人民代表大会を「何事もなかったような顔をして」無事に済ませたかったため、武漢で新型コロナウイルスによる肺炎患者が発生していることを知らせようとする現地の医者たちに圧力をかけて情報を隠蔽した。

今年も間もなく全人代が始まるが、開幕式の翌日に習近平や李克強など政府の指導層が手分けして各省の審議会に参加する。そのため地方政府の人民代表会議は彼らにとって「神聖」なのだ。取り敢えず北京に良い顔をしていくことを優先する。

この隠蔽体質は何十年にも及ぶ中国共産党による一党支配体制に毒されて、隠蔽をするのが当然といった精神性を持つに至っている。

その結果、人類はいま未曽有のコロナ禍の中で苦しんでいる。現時点で1億1千400万人の人が感染し、253万人の患者が死亡しているという。

その元凶である習近平を国賓として日本に招聘するなどということは、あってはならないことだ。国賓として来日すれば、天皇陛下に拝謁することになる。これにより習近平に免罪符を渡すことになるのだ。どんなことがあっても習近平の国賓来日を中止させなければならない。

尖閣諸島領海侵入と海警法

特に日本の場合は尖閣諸島周辺への中国の公船による領海侵入をくり返し受けている。そのことに対して日本は「遺憾である」といった、言っても言わなくても同じ効果しか持たない「呪文」のような言葉を口にするだけで、言動が一致していない。本気で「遺憾」と思っているのならば、そのような国の国家主席は日本の国土に一歩たりとも踏み入れさせてはならず、日本国に入国したいのならば尖閣の領海侵入を完全に中止してからにせよと、毅然として入国を断らなければならないのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド西部で離陸直後市街地に墜落、死者多数 英国行

ビジネス

独主要シンクタンク、25年成長率を上方修正 財政拡

ビジネス

ECB金利は適切な水準、インフレ低下は一時的=シュ

ワールド

IAEA理事会、イラン非難決議採択 イランは対抗措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 2
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 5
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 6
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 7
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 8
    【クイズ】今日は満月...6月の満月が「ストロベリー…
  • 9
    みるみる傾く船体、乗客は次々と海に...バリ島近海で…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中