最新記事

アフガニスタン

過去最悪の治安情勢で、祖国アフガニスタンを捨てる人たち

Fleeing Afghanistan Forever

2021年3月3日(水)17時00分
ステファニー・グリンスキ(ジャーナリスト、写真家)

特に治安悪化が深刻なカブールでは、下院議員を標的にした爆弾テロも起きた(2020年12月) Haroon Sabawoon-Anadolu Agency/GETTY IMAGES

<駐留米軍の完全撤収が迫るなか民間人攻撃が急増、故国を捨てて移住する動きが再び広がっている>

ほこりまみれの街並みと雪を頂いた山々が眼下を飛び去っていく。飛行機がエンジン音を立てて上昇するなか、アフガニスタンのパスポートを握り締めたジャワド・ジャラリ(30)の目に涙があふれた。故国から去るのは、たやすいことではない。

「戦争はとてもむごい」と、報道写真家のジャラリは言う。「全てを奪われる。仕事も安全も、希望も夢も」

アフガニスタンでの紛争が始まってから20年近くがたち、アメリカは同国からの完全撤収に向かっている。荷物をまとめて出て行こうとしているのは、米軍だけではない。

アフガニスタンではこの1年、なかでも過去数カ月間に、国内各地の治安が前代未聞のレベルに悪化している。特に深刻なのが首都カブールだ。

昨年9月以降、暗殺事件が200件前後発生していると、ある治安当局者は語る。独立団体アフガニスタン・ジャーナリスト安全委員会によれば、狙われているのは報道関係者だ。この1年間に起きた暴力事件は132件で、アフガニスタン人ジャーナリスト7人が死亡し、18人が負傷した。

国連によると、アフガニスタンでは昨年、民間人3000人以上が殺された。昨年9月にイスラム原理主義勢力タリバンとアフガニスタン政府が和平交渉を始めて以来、民間人犠牲者数は急増している。

今やカブール市民にとっては、爆発の音で目を覚ますのが日常だ。市民は爆弾攻撃のパターンを割り出そうとし、ラッシュアワーの外出、あるいは外出そのものを避けようとしている。

だがジャラリの場合、家に籠もることも選択肢でなくなった。自宅の近所がロケット弾攻撃を受けたのは昨年11月。絶え間なく続く攻撃と不安に心をむしばまれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=反発、アマゾンの見通し好感 WBDが

ビジネス

米FRBタカ派幹部、利下げに異議 FRB内の慎重論

ワールド

カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブルージェ

ビジネス

NY外為市場=ドル/円小動き、日米の金融政策にらみ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中