最新記事

未来予測

2100年には1年の半分が夏に

2021年3月31日(水)19時33分
松丸さとみ

熱波や山火事、暴風などが頻繁に起きるようになる...... image2roman-iStock

<中国科学院南海海洋研究所の研究によると、1年のうち約半分である166日は夏になるという...... >

夏は長く暑く、冬は短く暖かく

地球温暖化に対して何もしなければ、2100年までに北半球では1年の半分が夏になる──こんな研究がこのほど明らかになった。研究結果は、アメリカ地球物理学連合(AGU)発行の地球科学誌ジオフィジカル・リサーチ・レターズに掲載された。

ここ数年、春になったと思ったらあっという間に夏が来て、秋もすぐに終わってしまう...という感覚はないだろうか?これは単なる気のせいではないようだ。研究者らは、地球温暖化が原因で、夏はより長く暑く、冬はより暖かく短くなっているとしている。

この研究を行ったのは、中国科学院南海海洋研究所のグアン・ユーピン博士率いるチームだ。博士らは、1952年から2011年における、北半球の中緯度での四季の移り変わりを調べた。

その結果、この60年弱の間に、夏の長さが78日から95日に増えた一方で、春は124日から115日、秋は87日から82日、冬は76日から73日へとそれぞれ短くなった。なお、気温の高さが上位25%になった最初の日を夏の始まりとし、気温の低い上位25%が始まった日を冬の始まりと定義したという。

四季の長さの変化がもっとも顕著だったのは、地中海地方だった。また、チベット高原とチベット西域も大きな変化がみられた。

こうした季節の変化の原因は主に、温室効果ガスの排出などによる地球温暖化だ。

グアン博士らは、この数値を使ってさらに、もしこのまま何も解決に取り組まずに行った場合、2100年までに季節がどう変わっていくかを調べた。その結果、春と夏の到来は2011年と比べ1カ月ほど早くなり、秋と冬は1カ月ほど遅くなるであろうことが分かった。1年のうち約半分である166日は夏になり、冬は31日で終わることになる。

花粉症の悪化、感染症を媒介する蚊が北上など

研究者らは論文の中で、こうした季節の変化により、人間の健康が影響を受ける他、自然環境や農作物にも影響すると述べている。さらに、夏が暑く、長くなると、熱波や山火事、暴風などが頻繁に起きるようになるため、これまでの災害対策を調整する必要が出てくるという。

また、デング熱などウイルスの媒介となる蚊が北上し、現在は主に熱帯地域にみられるウイルス性の感染症が、これまで発生したことがなかったような地域で流行する可能性もある。論文ではさらに、花粉症の原因となる植物の生育期が長くなることから、花粉症の季節が長くなると予測している。

グアン博士は米CNNに対し、季節の変化により季節風の時期も変わると指摘。つまりは季節風がもたらす雨もまた変わることになるが、雨季の変化が、農作物の成長と合わない可能性もあるという。

オハイオ州にあるケント州立大学の気候科学者スコット・シェリダン教授(グアン博士らの研究には関わっていない)は米NBCニュースに対し、季節の変化にすべてが完ぺきに合わせられるわけではないと説明する。

「地表から生える花を例にすると、こうした花は開花することができても、授粉する蜂がいないかもしれないし、蜂の活動期のピークは過ぎているかもしれない」とシェリダン教授は話す。

こうした季節の変化による農業への連鎖反応については、グアン博士らも、研究論文の中で懸念を示しており、農業管理のための政策も必要になってくると予測している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB0.25%利下げ、6会合ぶり 雇用にらみ年内

ビジネス

NY外為市場=ドル下落後切り返す、FOMC受け荒い

ビジネス

10月米利下げ観測強まる、金利先物市場 FOMC決

ビジネス

再送〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中