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コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?──50カ国ランキング(2021年2月更新版)

2021年2月19日(金)14時40分
高山武士(ニッセイ基礎研究所)

粋な計らい。ワクチンを打つと市からフリードリンクが1杯もらえる(イスラエルのテルアビブ、2月18日) Corinna Kern-REUTERS

<コロナ被害と経済被害を数値化してランク付けした結果、日本は......>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2021年2月10日付)からの転載です。

1.結果の概要:昨年7月・10月に続き台湾が1位

2020年7月に新型コロナウイルスの感染拡大に対する影響について各国の状況を概観するために、「コロナ被害」および「経済被害」を数値化した上でランク付けし、10月には更新版を作成してきた1。

本稿は2021年2月上旬までの状況を踏まえたランキングの更新版である。2月11日時点までのデータをもとに再評価をしたところ、結果は以下の通りとなった。


【評価結果】

・総合順位では、台湾、ニュージーランド、シンガポールの順に高評価となった。
・評価が低い国は、20年10月のランキングに続き欧州及び南米に多い。これらの国では感染者数が多く、また成長率も大きく落ち込んでいる傾向にある。

評価は、「コロナ被害」(感染拡大)と「経済被害」をいずれも小さく抑えている国という観点から実施し、具体的には「コロナ被害」は「(1)累積感染者数」「(2)感染拡大率」「(3)致死率」のデータ、「経済被害」はコロナ禍によって失われたGDPの損失を推計して評価している。より詳細な手法については、上記レポートを参照。

2.結果の詳細:コロナ禍は「ショック」から「長期戦」へ

今回、実施した評価は図表1の通りであり、感染者数・死亡者数を21年2月上旬のデータに更新したほか、「経済被害」の算出のために用いた2020年(度)のGDP見通しを、昨年12月に公表された世界銀行の見通しや今年1月に公表されたOECD・IMFの成長率見込み、および各国政府の実績(見込み)値を用いて更新している(図表2)。

今回のランキングは台湾やニュージーランドなど「コロナ被害」をかなり小さく抑えている国が上位となった。特に台湾は経済被害も小さく、2020年のGDP成長率はコロナ禍前の見通しを上回っている状況にある。

一方、ベトナムやタイについては、累積感染者数2は少ないが、冬に感染が拡大したことで「コロナ被害」のうち感染拡大率の順位を落としている。ただ、1日あたり感染者数は多くてタイで800人、ベトナムで50人程度(7日移動平均)であり、他国と比較すれば相対的に少ないため、きちんと感染拡大を抑制できれば実際の「コロナ被害」は軽微となる可能性もある。

「経済被害」では、最新の見通しや実績値を反映しているが、昨年10月時点の見通しから相対順位に大きく変動した国は少なかった。その中ではトルコやカタールといった国では成長率が昨年の見通しよりかなり上振れすると見られており、順位を上げている。ただし、全体的にみると、感染拡大率の変化がランキングを上下させる主因となった。

日本も冬の感染急拡大を受けて緊急事態宣言が再発令されているなど、感染拡大率の評価が低下したため、順位を落としている。ただし、感染者数や死亡者は他国と比較して、低水準に抑えている。

一方、南米や欧州は昨年10月の評価と同様に「コロナ被害」および「経済被害」のどちらも悪い国が目立つ。欧州では、第1波の際、致死率が高くなってしまったことが前回10月の評価に影響していたが、今回の評価では、冬の第二波急拡大で厳しいロックダウンに踏み切らざるを得なかった国が多く、「コロナ被害」「経済」ともに順位を上げる事ができなかったと言える。

coronaanku0219-1.png

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1 高山武士(2020)「新型コロナウイルスと各国経済-コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?49か国ランキング」『ニッセイ基礎研レター』2020-07-03および、高山武士(2020)「新コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?-50か国ランキング(2020年10月更新版)」『経済・金融フラッシュ』2020-10-14を参照。本稿の分析対象国は、前回の対象国(MSCI ACWIの指数を構成する 49 カ国・地域)に加えて、問い合わせの多かったベトナムを加えて50か国・地域としている。また、中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除くことし、香港等の地域も含めて「国」と記載する。
2 感染者数や死亡者は各国の報告数値を用いているが、国によって報告基準が異なる点に注意が必要。

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