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COVID Cases Fell in Donald Trump's Last Week as President. Here's the Sad Reason Why

2021年1月27日(水)17時10分
カシュミラ・ガンダー

ミシガン大学疫学部のアンドリュー・ブラウワー助手も「流行が収束に向かって減少していく時期にあるとは思わない」と、本誌に語った。

現在、感染者数が減少しているのは、トランプやバイデンの手腕とは関係がない、と専門家らは見ている。「感染者の減少は、人々の接触が急増したホリデーシーズン後の自然な落ち込みである可能性が高く、政府による対策の結果ではない」と、ブラウワーは言う。

「トランプ政権は、ソーシャル・ディスタンスの確保やマスク着用といった公衆衛生上の対策を社会全体の文化して確立することに反対の姿勢をとった。バイデン政権が今更、文化の方向性を反転させるのは難しいだろう。だが、ワクチン接種キャンペーンを通じて感染予防の態勢を維持する必要がある」

「トランプが大統領ではなくなった今、多くのことが変わったが、パンデミックに関して言えば、バイデン大統領の影響が現れるまでにはしばらく時間がかかる」と、ボストン大学のバロカスは言った。

「新大統領が就任したからといって、魔法のように感染が収まったり、マスクを着用しなかった人が着用するようになったりはしない」

政治の功績ではない

ジョンズ・ホプキンス保健安全保障センターの上級研究員アメシュ・A・アダルヤ博士も本誌に対し、感染者の減少が長期的な傾向であるかどうかを判断するには早すぎると述べた。「今回の感染者数減少に関しては、政治家に功績があるとは思わない。そうアピールする政治家はいるかもしれないが」

「ホリデーシーズンに至るまでのウイルスの深刻さに関する政治的なメッセージは、よく言って『混乱』、悪く言えば『怠慢』 だった」と、ローズも言う。

確かに、政治リーダーがマスクの着用やソーシャル・ディスタンスの必要性を無視してクリスマスの集会を主催し、マスクをつけずに選挙集会に参加することを奨励した政治指導者を多くの国民が手本としたことで、ホリデーシーズン中に多くの人がウイルスにさらされた可能性は高い。その後、感染者数は急増した。

「この影響で、今後数週間、死者数は増え、より多くの感染者の治療が必要になるため、病院にはプレッシャーがかかるだろう」と、ローズは続けた。

さらに問題を複雑にするのは、イギリスとブラジル由来の変異したウイルスの存在だ。変異株が国内で広がれば、ちょっとした感染者の減少など台無しになりかねない、とブロウワーとアダルヤは指摘する。

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