最新記事

台湾

バイデン次期政権の下「台湾は『中国に対する防波堤』になれる」(国防アナリスト)

Taiwan Could Be America's 'Maritime Israel,' Says Taipei Defense Guru

2021年1月20日(水)20時30分
ジョン・フェン

西太平洋で行われた中国人民解放軍海軍の軍事演習に参加した空母遼寧(2018年4月) Stringer-REUTERS

<「中国のハワイ」となって米西海岸への攻撃に利用されるか、「海洋版イスラエル」として中国に対する防波堤になるかはアメリカ次第>

台湾はアメリカにとって、尊敬と支援に値する「海洋版のイスラエル」になるだろう、と台湾有数の国防アナリストは本誌に語った。

台湾は、かつては理論上のものでしかなかった「中国の脅威」の最前線で、数十年にわたって存在してきた。だがその脅威は今、かなり現実のものとなり、アメリカの政界エリートたちも「目覚めた」、と国家安全保障の専門家である台北の国防安全研究院(INDSR)の蘇紫雲(資源と産業研究所所長)は述べた。INDSRは。蔡英文(ツァイ・インウェン)総裁の台湾政府からの資金援助を受けて設立された台湾初の防衛シンクタンクだ。

米政界ではジョー・バイデンをはじめとする中国通の政治家たちが、1990年代にはすでに中国共産党の拡張主義的野望を警戒していた、と蘇は指摘する。当時は、1989年の天安門事件のような事件にもかかわらず、アメリカとその同盟国は、中国との将来の関係を理想化し続け、中国が経済成長とともに自由主義的な国家に進化することを望み、そうなると予想さえしていた。
 
12日に公表されたトランプ政権のインド太平洋戦略に関する内部文書は、「平和的な中国」という西側の夢がついに打ち砕かれたことを確認するものだった、と蘇は言い、香港の民主化運動の崩壊は「最後の一撃」となる可能性が高いと付け加えた。

中国とは正反対の存在

「オバマ政権の後半から始まった中国の南シナ海への拡張政策、そして最近の香港問題と新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)、すべてが中国政権に対する不信感を生み出している」と、蘇は言った。「20年前の中国の脅威理論が今や現実となった」

蘇の分析によると、アメリカの政策決定と学界における「目覚め」は、中国が今後数十年にわたって自国および世界の安全保障上の利益を脅かす戦略的脅威であるというアメリカ政府のコンセンサスを促進するうえで役に立った。

このトレンドのなかで、台湾は中国とは正反対の、西側と共通の価値観を抱く存在であるがゆえに「尊敬と支援」に値する国として浮上している、と彼は付け加えた。

台湾政府は米議会において超党派の支持を得ており、歴代のアメリカ政府は台湾の地政学的重要性を理解している、と 蘇は言った。しかし、国際世論の圧倒的な支持を獲得するという最後のハードルは残っている。

「台湾が中国の一部になれば、台湾は中国にとってのハワイのような軍事拠点となる。中国海軍はフィリピン海に簡単にアクセスできるようになる」と、蘇は説明した。「中国の原子力潜水艦は南シナ海からアメリカ西海岸を攻撃することはできない。西海岸を直接攻撃するためには、台湾から東の海域へのアクセスが必要だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独失業者数、11月は前月比1000人増 予想下回る

ワールド

東南アジアの洪水、死者241人に 救助・復旧活動急

ビジネス

ユーロ圏の消費者インフレ期待、総じて安定 ECB調

ビジネス

アングル:日銀利上げ、織り込み進めば株価影響は限定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中