最新記事

台湾

バイデン次期政権の下「台湾は『中国に対する防波堤』になれる」(国防アナリスト)

Taiwan Could Be America's 'Maritime Israel,' Says Taipei Defense Guru

2021年1月20日(水)20時30分
ジョン・フェン

米台関係で重要なもう一つの存在は、世界有数の半導体メーカー台湾積体電路製造(TSMC)だ。同社の顧客は、ハイテク企業のアップルとクアルコムだけではない。米空軍のF-35戦闘機や中国のエレクトロニクス大手ファーウェイにも半導体を供給している。

TSMCの動向でアメリカと中国の主導権争いに一定の結果が出る、と蘇は予測する。結局、TSMCは、相互に依存する「戦略的三角形」を作るために、アメリカ、日本と協調するだろう。

同社がファーウェイにマイクロチップを供給し続けることはありえるが、台湾製品が主流になれば、国防総省が警戒する情報漏洩の「バックドア」となりかねない中国製の軍民両用技術を警戒する必要はなくなるだろう。

自衛力を高めることで、台湾は中国の無謀な軍事・外交政策を抑止し、インド太平洋地域の安全保障やアメリカの安全保障に貢献している、と蘇は語った。彼はかつて、台湾の国家安全保障会議および国防省の顧問も務めていた。

「アメリカは台湾が独立国家であると公然と認めることはできないが、台湾をひとつのものとして扱う。台湾はこれをてこに利用して、防衛能力を強化できる」と蘇は主張する。「それによってアメリカ、オーストラリア、日本の台湾に対する信頼が高まる。台湾は、海のイスラエルになることができる」

台湾防衛の意思が明確に

「台湾は今、国際世論を勝ち取らなくてはならない。イスラエルのように、台湾は尊敬と支援に値する存在になれるだろう。台湾は自由で民主的な社会であるがゆえに尊敬に値する。そして自らを守ることができる台湾は、支援に値する」

イスラエルのパレスチナとの紛争とは異なり、台湾の中国に対する抵抗は、大規模な人権侵害のそしりを受けるようなものではなく、台湾政府に対する支持に正統性を与えるはずだ、と蘇は主張した。「台湾は人権を守ることを望んでいる。他者の権利を侵害するつもりはない」
 
中国と台湾を隔てる台湾海峡は、最も狭いところで幅約130キロある。

「残念ながら、台湾は中国に近いが、幸いなことに台湾海峡は十分に広い。台湾への侵攻には、大規模な陸と海からの攻撃が必要になるだろう」と蘇は言う。

12日に機密解除されたインド太平洋戦略に関するホワイトハウスの内部文書は、中国による攻撃が発生した場合に台湾を守るというアメリカの意思をきわめて明確に示した。これによって、数十年にわたる難問だったアメリカ政府の中台関係に関する外交政策の「戦略的曖昧さ」が解決されたといっていい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

11月の基調的インフレ指標、加重中央値と最頻値が伸

ワールド

米、ナイジェリア上空で監視飛行 トランプ氏の軍事介

ビジネス

仏、政府閉鎖回避へ緊急つなぎ予算案 妥協案まとまら

ワールド

米大統領、史上最大「トランプ級」新型戦艦建造を発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中