最新記事

アメリカ政治

米共和党の「分断」深刻 トランプが残した負の遺産

2021年1月20日(水)18時00分

政治的打算

議事堂乱入事件の直後でも、大統領選でバイデン氏勝利を認定した幾つかの激戦州の選挙人団による投票結果を巡り、共和党下院議員では3分の2に当たる139人、上院でも8人の同党議員が異を唱えた。テキサス州選出の同党下院議員の場合、24人のうち17人が一部の州の選挙人団認定に異議ありとした。

ロイターが昨年11月に行われた大統領選でのテキサス州下院選挙区の投票動向を調査した結果から見ると、バイデン氏の勝利を認定した同州選出7人の中で、トランプ支持が強い地区から選出されたのはケビン・ブレイディ氏とカイ・グランジャー氏の2人にとどまる。トランプ氏は自分の意にそむく共和党議員の選挙区には、今後の選挙の予備選で「刺客」を送ると示唆しており、今回の2人は党公認候補の地位を得るのが厳しくなる可能性もある。

一方、残る5人の選挙区はテキサス州でも穏健な有権者が多く、民主党員の比率が相対的に高い。つまりバイデン氏勝利を認めても政治的リスクは小さい上に、トランプ氏に反対する穏健な有権者の支持をむしろ集められるかもしれない議員たちだ。

ダラス北部の郊外地域が選挙区のほとんどを占めるバン・テイラー下院議員も、バイデン氏勝利を認めた1人。それでもロイターの取材には慎重な態度を崩さず、トランプ氏への直接批判は避けた。バイデン氏勝利を自分が認定したのは合衆国憲法上の手続きの定めに基づいただけであり、選挙不正や、多くのトランプ支持者の不興を買った州の選挙規定変更を巡って、調査することは支持すると強調した。「選挙制度への国民の信頼を取り戻すことが、まさに重要だ」と説明した。

トランプ支持者が払う代償

伝統的な共和党員の多くは、やがてトランプ氏の影響力が消滅すると期待しつつも、今はまだ同氏が党内で力があると認める。

カリフォルニア州のストラテジスト、スタッツマン氏は「トランプ氏が独自のメディアをつくり、次々に全米で遊説集会を開き、本当は選挙に勝っていたと言い張れば、恐らく共和党はさらに四分五裂してしまう」と危機感を抱く。

もっとも一部の共和党ストラテジストは、トランプ氏の側近グループや、根拠のない選挙不正説を熱心に広めて回る支持者たちについて、このままではいずれ、より大きな代償を支払うことになるとの見方を示した。

テキサス州西部を見ても、トランプ氏の主張を否定する共和党政治家に背を向けるトランプ支持者が確かに多い一方で、共和党の方向性にもう少し微妙な意見を持つ人もいる。

同州ラメサ市のジョシュ・スティーブンス市長もその1人。選挙不正疑惑自体については民主党が認識している以上に大きな問題だとしながらも、トランプ氏の敗北が必ずしも不正のためだとは考えていない。

スティーブンス氏は、トランプ氏の中核支持層は歩み寄りの方法を学ぶべき時期を迎えたと指摘。連邦議事堂乱入といった異様な振る舞いや、大規模な選挙不正を言い続けることは、逆にトランプ氏を損なうことになると語る。「やってはならないのが、自分たちの正しさを証明するとして防弾チョッキを着用、ライフルを持ち、(アクション映画の主人公)ランボーのようにこれを振りかざしながら歩き回ることだ。その種の過激主義は全く何も生み出さない」とした。

(Brad Brooks記者、Gabriella Borter記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・議会突入の「戦犯」は誰なのか? トランプと一族、取り巻きたちの全内幕
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中