最新記事

フォーラム

アメリカを統合する大前提が「今回壊れた」可能性は何パーセントか

2021年1月20日(水)13時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

(左から)田所昌幸・慶應義塾大学教授、小濵祥子・北海道大学准教授、待鳥聡史・京都大学教授 写真:サントリー文化財団

<アメリカのフェアネス(公平性)、イギリス・カナダとの違い、そしてカギとなるのは2026年だという発言も飛び出した。バイデン時代のアメリカはどうなるのか。フォーラム『新しい「アメリカの世紀」?』より(後編)>

「超大国アメリカの没落」など、「アメリカの世紀の終わり」はしばしば議論されてきたが、今後はどうか?

論壇誌「アステイオン」編集委員長の田所昌幸・慶應義塾大学教授と、同編集委員で特集責任者の待鳥聡史・京都大学教授、小濵祥子・北海道大学准教授によるオンラインフォーラム『新しい「アメリカの世紀」?』(主催:サントリー文化財団)を再構成し、掲載する(後編)。

※前編:「繰り返される衰退論、『アメリカの世紀』はこれからも続くのか」より続く。

◇ ◇ ◇

asteion20210119forum-kohama.jpg

小濵祥子/北海道大学大学院公共政策学連携研究部准教授。1983年生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程を経て、ヴァージニア大学政治学部博士課程修了。博士(国際関係)。専門はアメリカ外交、国際紛争。著書に『ポスト・オバマのアメリカ』(共著、大学教育出版)など。

アメリカのフェアネス

■田所: 話が少し変わりますが、住みやすい国でいうとアメリカはどうでしょうか?

■小濵: アメリカは移民やマイノリティ、留学生でも能力さえあれば認めてもらえるという安心感が私にはあります。人種差別が存在するのは確かながら他国と比較しても、育ちや階級など能力とは関係ないところで競争にそもそも参加できないということは少ないのではないかと......。

asteion20210119forum-tadokoro.jpg

田所昌幸/慶應義塾大学法学部教授。1956年生まれ。京都大学法学部卒業。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス留学。京都大学大学院法学研究科博士課程中退。博士(法学)。専門は国際政治学。主な著書に『「アメリカ」を超えたドル』(中央公論新社、サントリー学芸賞)、『越境の政治学』(有斐閣)など多数。論壇誌『アステイオン』編集委員長も務める。

■田所: 小濵先生のご指摘はかなり適切ですね。ですから、私は競争して負けてしまうのではないかと、アメリカのほうが逆に怖いです(笑)。しかし、イチローであれ誰であれ、ヒットを打ったらヒットであり、ホームランを打ったらホームランだと、そこはアメリカ人は極めてはっきりしています。そこが疲れるところではありますが、競争には勝ちさえすればいいのです。

asteion20210119forum-machidori-2.jpg

待鳥聡史/京都大学大学院法学研究科教授。1971年生まれ。京都大学卒業。京都大学大学院法学研究科博士課程退学。博士(法学)。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『財政再建と民主主義』(有斐閣)、『首相政治の制度分析』(千倉書房、サントリー学芸賞)など多数。

■待鳥: そうですね、アメリカは人の生き血を吸ってというか、世界中の最高の能力や資質を持った人に、最高の成果を出させることで成り立ってるところはありますよね(笑)。しかし、最高の「生き血」を提供してくれた人には最高の処遇を与えるということを約束する国であり、そこがアメリカの「フェアネス(公平性)」です。

■田所: だからこそ、「アメリカンドリーム」を信じて次から次へと多くの人がやってきて、成功した人たちはアメリカがやはり世界で一番いいと言う。そして成功者が自らアメリカの戦力になっていくという力強さがあります。

イギリスはその点ではやや異なります。イギリス人が言うほどに階級社会ではないと私は思っていますが、やはり地元の人でないと入れないところがあるのは事実です。でも、それはかえって清々しい。つまり中に入ってさえ行かなければ、勝手にやっていてくださいという姿勢です。

イギリスがとても居心地がいいのは、ほっといてくれることです。でも、助けてほしいと頼んだら割と親切に助けてもくれる。そういう意味では、アメリカ人は頼みもしないのに親切にしてくれる人が非常に多いというのが私の偽らざる印象です(笑)。それが人のよさであり同時にフェアで、しっかりやれば確実に認めてくれるという他者への敬意でもあります。そういうアメリカのフェアネスに多くの人が惹かれているのでしょう。

しかし、実際には多くの人が挫折するわけです。競争ですから負けた人たち、特に昔からアメリカにいて負けていった人たちには非常に厳しいのが現実です。それがよく指摘されるラストベルトの人々ですね。

ニュース速報

ワールド

米下院、1.9兆ドルのコロナ法案可決 上院は時給引

ワールド

ミャンマー国連大使、異例のクーデター非難 国際社会

ワールド

バイデン米大統領、テキサス州訪問 寒波の被害状況視

ワールド

米大統領、報復空爆でイランに警告 「罰を免れること

MAGAZINE

特集:ルポ新型コロナ 医療非崩壊

2021年3月 2日号(2/24発売)

第3波の日本で「通常」の医療体制は崩壊したが現場には硬直した体制を変え命を守った人々もいた

人気ランキング

  • 1

    バブルは弾けた

  • 2

    がら空きのコロナ予防接種センター、貴重なワクチンは余って山積み──イギリスに負けたEUの失敗

  • 3

    トルコ宗務庁がトルコの有名なお土産「ナザール・ボンジュウ」を許されないとした理由

  • 4

    弁護士の平均年収は4割減 過去十年で年収が上がった…

  • 5

    コロナ危機が招いた株価バブルは2021年に終わる

  • 6

    タイガーが暴露症の女ばかり選んだ理由(アーカイブ…

  • 7

    大口投資家がビットコインの買い占めに走り、個人投…

  • 8

    日本の電波行政を歪めている真犯人はだれか?

  • 9

    株価が上がっているのに、「価値の下がっているモノ…

  • 10

    ビットコイン暴落、投資家は「全てを失う覚悟を」(…

  • 1

    屋外トイレに座った女性、「下から」尻を襲われる。犯人はクマ!──アラスカ

  • 2

    中国はアメリカを抜く経済大国にはなれない

  • 3

    バブルは弾けた

  • 4

    がら空きのコロナ予防接種センター、貴重なワクチン…

  • 5

    トランプにうんざりの共和党員が大量離党 右傾化に…

  • 6

    動画で見る、トランプ時代の終焉の象徴

  • 7

    弁護士の平均年収は4割減 過去十年で年収が上がった…

  • 8

    あらゆる動物の急所食いちぎり去勢も? 地上最凶の…

  • 9

    強大化する中国を前に日米豪印「クアッド」が無力な…

  • 10

    アメリカの顔をした中国企業 Zoomとクラブハウスの…

  • 1

    フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実

  • 2

    ロシアの工場跡をうろつく青く変色した犬の群れ

  • 3

    屋外トイレに座った女性、「下から」尻を襲われる。犯人はクマ!──アラスカ

  • 4

    さようならトランプ、負債3億ドルと数々の訴訟、捜査…

  • 5

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」…

  • 6

    韓国メディアが連日報道、米日豪印「クアッド」に英…

  • 7

    中国はアメリカを抜く経済大国にはなれない

  • 8

    全身が泥で覆われた古代エジプト時代のミイラが初め…

  • 9

    バブルは弾けた

  • 10

    現役医師が断言、日本の「ゆるいコロナ対策」が多くの…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月