最新記事

トランプは終わらない

無邪気だったアメリカ人はトランプの暴挙を予想できなかった

WE CANNOT BE COMPLACENT ANYMORE

2021年1月13日(水)18時05分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)

magSR20210113wecannotbecomplacent-2.jpg

選挙結果を受け入れず議事堂になだれ込んだトランプの支持者たち LEV RADIN-PACIFIC PRESS-LIGHTROCKET/GETTY IMAGES

しかし、そんな運もいつかは尽きる。アメリカ人は4年前に、病的なまでにナルシシストのトランプを大統領に選んでしまった。この男が大統領として最悪なのは4年前から明らかだったが、その決定的な証拠が1月6日に起きた事態だ。

まともな根拠を示すことなく「不正選挙」を訴えてきたトランプは、副大統領のマイク・ペンスが粛々と選挙結果の承認手続きに着手したまさにそのとき、自らの熱狂的な支持者らに「議事堂へ向かえ」と呼び掛けた。

それまでのアメリカ人は無邪気だった。選挙でトランプに一票を投じた人は7400万人もいた。1月6日の時点でさえ、共和党の少なからぬ議員が選挙結果に異議を唱えていた。しかし誰が、これほどまでの暴挙を予想していただろう。

既にペンスはトランプを見限り、選挙人投票の集計結果に異を唱えないと表明していた。つまり、ジョー・バイデンを次期大統領と認めるということだ。ところが、そこへ数千人の暴徒が議事堂に押し掛けた。窓ガラスを割り、銃を構える警官を押しのけて、議事堂を実質的に占拠した。

連邦議会議事堂の警備に当たる議会警察(USCP)はもとより小編成で、そもそもこんな事態を想定していなかった。議事堂が襲撃されるのは1812年に始まる米英戦争で首都が英軍に占領されて以来のことだから、まあ無理はない。

暴徒はナンシー・ペロシ下院議長(民主党)の執務室や下院の議場にも乱入した。混乱の中で双方に多くの負傷者が出た。現時点では警官1人を含む5人の死亡が確認されている。

大統領による反乱は想定外

始まりはホワイトハウス前で開かれたトランプ支持派による抗議集会だった。このときトランプは支持者に、投票の集計結果に異議を唱える共和党議員を応援するために議事堂まで行けと呼び掛けた。

その後にはツイッターへの投稿で、ペンスには「この国と憲法を守るためになすべきことをする勇気がない」と断じ、支持者をあおり立てた。

議事堂占拠という前代未聞の事態を招いてからも、トランプは「平和的な行動を。暴力はなしだ!」と呼び掛ける一方、あの選挙は盗まれたのであり、勝ったのは自分だという従来の主張を繰り返した。そして暴徒たちには、「諸君を愛している、諸君はすごく特別だ」と呼び掛けていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国、和平合意迫るためウクライナに圧力 情報・武器

ビジネス

米FRB、インフレリスクなく「短期的に」利下げ可能

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 9
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中