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中国の締め付け強化で自由を失う香港 引き裂かれる家族と社会の絆

2020年12月31日(木)09時34分

香港に立ち並ぶ高層マンションの一室、狭いキッチンに広東料理の濃厚な香りが漂っている。秋の訪れを告げる中秋節の時期、香港では家族や親戚が集まり、月を眺め、月餅や料理を楽しみながら団らんのひと時を共にするのが恒例だ。5日、香港で撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

香港に立ち並ぶ高層マンションの一室、狭いキッチンに広東料理の濃厚な香りが漂っている。秋の訪れを告げる中秋節の時期、香港では家族や親戚が集まり、月を眺め、月餅や料理を楽しみながら団らんのひと時を共にするのが恒例だ。

しかし、アサ・ライさん(41)にとって、この日は、生まれ育った香港を去る前に、両親との別れを惜しむ辛い晩餐になった。

アサさんが夫のウィリーさん(46)とともに、3人の娘を連れてスコットランドへの移住を決意したのは1年以上前だが、いまでも後ろ髪を引かれる思いは消えていない。だが、かつての自由を失いつつある香港に、自分たちや子供たちの将来を託すことはできないだろう。そう思いあぐねた末の身を切るような決断だった。

「娘や孫に会えないのは悲しい。行って欲しくはない。やるせない気持ちだ」とアサさんの母、エイダさんは目頭を押さえた。「考えたくない。考えると泣いてしまうから」

香港の変貌に幻滅

香港の自由に対して中国政府が圧迫を強める中、香港ではこうした居心地の悪い夕食時の会話や家族の辛い離別がますます増えている。中国政府は6月、広範に適用される国家安全法を施行して権威主義的な方針を強化した。同法のもとで続く反体制派に対する容赦ない弾圧に終息の気配は見えていない。

香港の典型的な中産階級であるライ家は、政治的には穏健で、訴追を恐れて国外に逃れる反政府デモの参加者や活動家らとは違う。にもかかわらずアサさん一家が香港を離れようと決めたのは、愛する故郷の様変わりした姿に幻滅したからだった。

「これまでに起きたすべてのことの積み重ねだ。(香港が)どんどん悪くなっていくように思えた。厳密にどの瞬間に決意したとは言いにくいけれど、あえて言えば、言論の自由が縮小しはじめた時だろうか」とアサさんは振り返る。

「安定回復」に胸を張る当局

ロイターでは、アサさん一家の辛い決断を5カ月にわたり取材してきた。そこから見えてきたのは、自由を求める人々の大量流出が家族の分断やコミュニティーの動揺を生み、社会を深く傷つけている香港の現状だった。

香港の当局者は、人権と自由が損なわれることはない、と明言し、国家安全法は社会の安全・秩序を維持するために必要だと主張する。当局側から見れば、抗議行動の参加者はレンガや火炎瓶を警察に投げつけ、鉄道駅の出入り口に放火し、親中派の人物と関係があると見なされた銀行支店や店舗を略奪した不穏分子だ。

警察が催涙ガスや放水銃を使用することも多くなり、主要な民主派活動家を含め、逮捕者は約1万人に及んだ。抗議の際に使われるスローガンや歌は違法と断じられた。

「国家安全法の施行により、この1年の混沌たる状況と深刻な暴力が食い止められた。安定が戻り、香港への信頼感が増した。香港は正常な機能を取り戻した」と行政府広報官は胸を張る。香港住民の海外移住が増えていることについては、雇用や教育、ビジネス、それ以外の個人的な理由とともに、「(昨年の)抗議行動と無政府状態」が動機の1つになっている可能性がある、と指摘した。

ロイターは中国の内閣に相当する国務院のもとに設けられた香港マカオ事務弁公室、香港に駐在する中央政府の出先機関のトップである駐香港連絡弁公室にもコメントを求めたが、回答は得られなかった。

過去のピークに匹敵する脱出規模

香港の治安が回復したとする当局の見解をよそに、ライ夫妻と同様、海外脱出を計画する香港住民の動きはさらに広がりそうだ。

それをうかがわせるデータのひとつは、英国政府による「海外在住英国民(BNO)」資格のパスポート発行件数だ。このパスポートは、植民地時代には市民権取得への道を開いたという歴史的経緯のある書類で、英国政府当局者によると、今年に入ってからの発行件数は20万件以上にのぼっている。

香港市民は現在、540万人がBNOの資格を有しており、英内務省では2021─25年に32万2000人が英国に移住すると試算している。来年1月以降、BNO有資格者は5年間英国に滞在することができる。5年経過後は要件を満たしていれば在留許可を申請でき、いずれは市民権も取得可能になる。

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