最新記事

動物

ワタリガラスの知能は大型の類人猿並みであることが明らかに

2020年12月16日(水)16時45分
松丸さとみ

ワタリガラスは多くの神話に登場する...... Tom Meaker-iStock

<ドイツのオスナブリュック大学の研究による、ワタリガラス(ハシブトガラスよりも一回り大きい渡り鳥)には大型の類人猿並みの物理的・社会的な能力があることが明らかになった......>

大型類人猿と同程度の知的能力

カラスは頭がいいということは、日頃の行動からよく言われているが、このほど発表された実験により、カラス、なかでもワタリガラス(ハシブトガラスよりも一回り大きい渡り鳥)には大型の類人猿並みの物理的・社会的な能力があることが明らかになった。実験結果は、自然科学や臨床研究に関するオンライン学術誌サイエンティフィック・リポーツに発表されている。

今回ワタリガラスの認識力を調べる実験を行ったのは、ドイツのオスナブリュック大学の認知科学者シモーネ・ピカ博士が率いるチームだ。同博士によると、これまでもさまざまな研究者が同様の実験を行ってきたが、その多くは、1つのタスクだけでワタリガラスの能力を評価するものだったという。

ピカ博士は科学誌サイエンティフィック・アメリカンに対し、1つのタスクだけによる実験では多くの場合、「人が何かを隠しているかを果たしてワタリガラスが理解できるか否か、しか分からない」と話した。

そこでより包括的なワタリガラスの能力を評価するため、同博士のチームは、物理的タスクや社会的タスクをこなす合計33種類のテストをカラスに行わせた。物理的タスクでは、カップの中に隠した物を見つけられるかや、数を理解できるかといった能力を評価。社会的タスクでは、実験者が出す合図を理解できるか否かといった能力を評価した。

これは、チームの1人である、マックス・プランク進化人類学研究所のエステル・ヘルマン博士が2007年に行った、チンパンジーやオランウータンといった大型の類人猿と人間の子どもの能力を比較した実験に倣ったものだ。

生後4カ月で人間の2歳半とほぼ同等の知的能力も

実験に使ったワタリガラスは、人工飼育された8羽だ。生後4カ月、8カ月、12カ月、16カ月に同じテストを実施した。実験の結果、ワタリガラスはわずか生後4カ月でほとんどのタスクをこなすことができ、その後、月齢の変化によって大きな能力の違いは見られなかった。

ワタリガラスの社会は離合集散型(個体が群れたり離れたりする社会)であり、また同じつがいで長期間過ごす一夫一婦制であるという。同博士らは、そのため生存や生殖には協調や連携が非常に重要であることから、早い段階で物理的・社会的に高い認識能力を身に付けるのではないかと考えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国「国慶節」初日、鉄道利用が過去最高 消費押し上

ビジネス

シティ、イーサーの年末予想を引き上げ、ビットコイン

ビジネス

午後3時のドルは147円前半で下げ一服、再びレンジ

ビジネス

グーグル、ハッカー集団が幹部に恐喝メール送付と明ら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」してしまったインコの動画にSNSは「爆笑の嵐」
  • 4
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 8
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 9
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 10
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かっ…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 4
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 7
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中