次期大統領バイデンの公約実現に立ちはだかる米共和党重鎮マコネルの壁
サードウエーのベネット氏は、共和党の抵抗が激しい場合、バイデン氏は大統領令を多用せざるを得なくなり、そうするとトランプ氏が任命した「敵対的な判事グループ」にも大統領令の正当性を訴えていかなければならなくなると懸念する。
マコネル氏の広報担当者は、バイデン次期政権とどう協力していくかとの質問に回答しなかった。マコネル氏はこれまで、11月に自身が民主党の対立候補に勝利した選挙戦の討論会の場などを含めて、バイデン氏の政策に関する直接的な言及はほとんど見当たらない。
上院では、新型コロナ関連緊急支出など予算調整ルール適用外の主要法案は、60人の賛成があれば採決に持ち込めるので、バイデン次期政権が10人もしくはそれ以上の共和党議員の支持を獲得すれば、マコネル氏もそうした意向を無視して自由には振る舞えない。
かつてマコネル氏の経済政策顧問で、現在は政治リスク分析会社ユーラシア・グループのマネジングディレクターを務めるジョン・リーバー氏は「共和党議員の間に何か行動すべきだとの雰囲気があるとマコネル氏が認識する法案なら、同氏はバイデン氏と協力する展開が全面的に見込まれる。そうした空気がなければ、彼に無理やり合意を実現させることはできない。共和党2人と民主党48人が支持する法案を通過させようとはしないだろう」と述べた。
見えない交渉手段
バイデン氏とマコネル氏は、24年間にわたって同じ上院議員として働いてきただけでなく、共和・民主両党の財政運営や政府機関閉鎖を巡るこれまでの政治対立で、直接折衝してきた仲だ。2012年の「財政の崖」に際しては、所得税の最高税率引き上げと大規模な歳出削減の撤回を盛り込んだ合意を共同してまとめ上げた。
マコネル氏は16年に出した自叙伝「長いゲーム、ある回想録」で、バイデン氏を「好ましく思った」人物で「協力が可能だった」と描写している。もっともマコネル氏はまだ正式にバイデン氏を次期大統領と認めておらず、祝意も表していない。大半の共和党議員もマコネル氏の姿勢に従っている。
バイデン氏が副大統領時代のように、マコネル氏やほかの共和党指導部との直接対話を再開するのかどうかも分からない。
次期副大統領のカマラ・ハリス氏と言えば、上院議員としてはマコネル氏としばしば政治的に真っ向から対決する姿勢を示してきた。例えば昨年12月には、トランプ氏の弾劾裁判に証人を呼ぶことをマコネル氏が阻止しており、職務を忠実に遂行していないと批判。「マコネル氏は上院による裁判ではなく、真相の隠蔽を望んでいる」とこき下ろした。
では次期財務長官に指名されたイエレン前連邦準備理事会(FRB)議長はどうか。バイデン氏が雇用拡大の手段として打ち出した、多様性の促進や子育て・教育などへの支出増といった幾つかの左派的政策に関して、イエレン氏は経済的な理論武装という面で重要な役割を果たしそうだが、マコネル氏より優位に立てるとは誰も予想していない。
イエレン氏はFRB議長として議会と直接交渉をした経験は乏しく、マコネル氏は13年にイエレン氏の議長指名に反対した。強いドルを支援する姿勢が不十分との理由からだった。
ブッシュ政権時代に財務省とホワイトハウスの報道官だったトニー・フラット氏は「イエレン氏が天性のロビイストだとは思えない」と肩をすくめた。
(David Lawder記者、Heather Timmons記者)

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