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中国TPP参加意欲は以前から──米政権の空白を狙ったのではない

2020年11月23日(月)20時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

TPP11においてTPPに書かれていた既定の適用を停止している条項の主なものを列挙してみよう。

●第5章「税関当局及び貿易円滑化」のうち、「急送貨物」

●第9章「投資」のうち、「投資に関する合意」「投資の許可」の定義。また「請求の仲裁への付託」、「仲裁人の選定」、「準拠法」

●第10章「国境を越えるサービスの貿易」のうち「急送便サービス」

●第11章「金融サービス」のうち「適用範囲」

●第13章「電気通信」のうち「電気通信に関する紛争の解決」

●第15章「政府調達」のうち「参加のための条件」、「追加的な交渉」

●第18章「知的財産」のうち「対象事項」、「不合理な特許期間の調整」「開示されていない試験データその他のデータの保護」「生物製剤」「著作権及び関連する権利の保護期間」「技術的保護手段」「権利管理情報」「衛星放送用及びケーブル放送用の暗号化された番組伝送信号の保護」「法的な救済措置及び免責」「インターネット・サービス・プロバイダ」など

●第20章「環境」のうち「保存及び貿易」

●第26章「透明性及び腐敗行為の防止」のうち「医薬品及び医療機器に関する透明性及び手続の公正な実施」の項(列挙はここまで)

これらから見えてくるのは、中国にとって相当に不利になる規定はほぼ「適用停止」になっているということである。

アメリカが入っていた時のTPPと比べると、中国がかなり入りやすくなっている。たとえば、どのような点において中国に有利になったのかを「中国側の視点から」見てみると、概ね以下のようなことが言えるのではないだろうか。

1.第15章「政府調達」に設けられていた「参加のための条件」、「追加的な交渉」の条件はかなり厳しいものだが、これが「適用停止」になったので、中国にとってはハードルが低くなった。

2. 郵政(第10章)、金融(第11章)、電気通信(第13章)、環境(第20章)などは、中国では国有企業が独占している部門なので、これまでのTPPではハードルが高かったが、TPP11では関係する規定が「適用停止」になっているので、中国にとっては有利になっている。もともとTPPの規定には国有企業を制限する条項が多く、中国に対して高いハードルを設けていた。それらの多くが適用停止になっているので、中国にとっては加盟しやすい結果を招いている。

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