最新記事

香港

米総領事館に亡命申請にきた十代活動家を香港当局が拘束、米側は亡命を拒絶?

Hong Kong Teen Activist Seeking U.S. Asylum Detained at Last Minute Near Consulate

2020年10月28日(水)17時10分
ジョン・フェン

両脇を捜査員に抱えられ連行される鍾と思しき映像 South China Morning Post/YOUTUBE

<香港独立派の19歳の活動家が、米総領事館の近くで香港当局に拘束された。亡命申請にきたがまだ閉まっていたという情報と、申請したが拒絶されたという情報がある>

亡命を求めて米総領事館を訪ねようとした10代の香港の活動家が10月27日、近くの喫茶店内にいたところを香港の公安当局に逮捕されたと地元メディアが報じた。

英国を拠点とする活動グループ「フレンズ・オブ・ホンコン」はニューズウィークに対し、19歳の鍾翰林(トニー・チョン)が警察に逮捕され、鍾の自宅が捜索を受けていることは確かだと述べた。

現在は解散している香港独立派活動団体「学生動源」の代表だった鍾は、現地時間の午前8時10分に米総領事館に到着したが、まだ開館前だった、と香港紙「蘋果日報(アップルデイリー)」は伝えている。

総領事館が開くのを待つ20分のあいだに、鍾は25メートルほど離れた太平洋珈琲に入り、そこから学生動源に電話をかけた。その電話で公安当局者らしい人物に尾行されていると話したあと、鍾は「音信不通になった」と学生動源は述べている。

「鍾翰林は今朝(10月27日)電話をかけてきて、当局者に尾行されていると話したが、現在は中西区の上環にある警察署にいることが確認できる」。学生動源の広報担当者はニューズウィークにそう話した。「鍾の自宅は現在、捜索を受けている」

香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は、鍾が「2人の男に挟まれ、店から連れ出された」とする模様を報じている。

匿名の警察関係者が同紙に語ったところによれば、鍾は、国家安全維持を担当する部署の捜査官に拘束されたという。香港警察に新設されたこの部署は、中国政府が6月30日に成立させた香港国家安全維持法(国安法)の執行を監督するためのものだ。

7月の逮捕でパスポートは押収

また、同紙はフレンズ・オブ・ホンコンのメンバーの話として、鍾が10人あまりの制服および私服の捜査官に連行されたとの情報も伝えている。

解散後も国外で活動を続けている学生動源は、フェイスブックへの投稿のなかで、元代表が「法律家による支援を受け」、「現在は弁護士が同席して供述を記録している」と述べている。

学生動源が別のフェイスブック投稿で述べているところによれば、鍾逮捕の6時間後には、同じく元メンバーである何忻諾と陳渭賢の2名も香港当局に逮捕された。2名は別々の警察署に拘留され、法律家による支援を受けたという。

鍾は7月、ほかの3人とともに、中国政府が成立させた国安法のもとで逮捕された最初の活動家になった。国安法は、分離主義、政府転覆、テロリズム、外国勢力との共謀を禁じている。鍾は、学生動源を通じて香港の民主化を訴えていた。

蘋果日報によれば、鍾は逮捕時にパスポートを押収されたため、香港を離れられなかったという。鍾は保釈され、10月27日に警察に出頭することを命じられていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ

ワールド

ベネズエラ沖で2隻目の石油タンカー拿捕、米が全面封
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中