最新記事

感染症対策

欧州、早くもインフルエンザワクチンが不足 コロナと「ツインデミック」リスク

2020年10月23日(金)10時38分

欧州の一部都市でインフルエンザの予防接種への需要が急増してワクチンが不足しており、新型コロナウイルスとインフルエンザの両方の感染が広がる「ツインデミック」が起きるリスクが高まっている。ローマで15日撮影(2020年 ロイター)

欧州の一部都市でインフルエンザの予防接種への需要が急増してワクチンが不足しており、新型コロナウイルスとインフルエンザの両方の感染が広がる「ツインデミック」が起きるリスクが高まっている。

欧州の各国政府は今年、インフルエンザワクチンの発注を増やし、予防接種を受けるように啓発活動を進めている。通常より早い接種で4億5000万人に上る欧州人口の接種率を高め、医療機関の負担を減らす狙いだ。

ワクチン大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)やサノフィ、アボット・ラボラトリーズ、セキーラスは需要増加を想定し、欧州への供給を平均で30%増やした。ワクチンメーカーを代表するワクチン・ヨーロッパは21日に公表した声明で、フル稼働しているが最近の追加需要に追いつかないと述べた。

欧州の各都市や政府の当局者、医療専門家とのインタビューでも、ワルシャワなど主要都市で早い時期にワクチンの需要が増え、遅れが出たり一時的にワクチン不足に陥ったりしていることが分かった。

欧州のインフルエンザの流行は10月に始まり、11月半ばから12月初めにかけて拡大する。毎年400万─5000万人がかかり、最大7万人が関連で死亡する。高齢者やリスクが高いグループで多い。

ワルシャワの薬局でマネージャーを務めるGrazyna Lenkowska-Mielniczukさんは「今年は常に患者がワクチンを求めに来る。毎日10人を超える」と話した。ポーランド保健省は今年300万本を購入し、20日時点で160万本が届いているという。

ベルギーでは発注したワクチンのうち3分の1がまだ納品されていない。一部は通常より遅く届くという。政府は今年、昨年より10%多い300万本近く発注した。

人口約10万人のオーストリア南部クラーゲンフルトの当局者は声明で、通常の量のワクチンを1月に発注し、その後新型コロナのパンデミック(世界的大流行)進展に伴い追加注文しようとしたができなかったと述べた。オーストリア政府は昨年より60%多い125万本を発注した。

ワクチン・ヨーロッパは、インフルエンザのワクチンを製造するために要する時間が長いため、製造業者は異例の事態の中で生産を増やすために全力を尽くしたと話す。ただ、現在は生産能力を拡大する余地が限られていると指摘した。

ワクチンの各国への配分は通常、インフルエンザが流行する時期から1年以上前に決める。北半球のワクチン製造は3月上旬に始まる。

GSKの広報担当は、インフルエンザワクチンの保存可能期間が短いことも予期せぬ事態への調整を難しくすると話した。GSKは今年と向こう数年間、ワクチンの製造・供給を増やす予定だが、今後も需要が製造能力を上回るとの見方を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・強行退院したトランプが直面する「ウィズ・コロナ選挙戦」の難題
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ



ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの

ワールド

トランプ氏、司法省にエプスタイン氏と民主党関係者の

ワールド

ロ、25年に滑空弾12万発製造か 射程400キロ延

ビジネス

米ウォルマートCEOにファーナー氏、マクミロン氏は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中