最新記事

フィリピン

比マラウィ武装占拠したイスラムテロ組織、新指導者で再編 ドゥテルテと和平結んだ組織にも勧誘

2020年10月18日(日)18時41分
大塚智彦(PanAsiaNews)

2017年にマラウィ市を武装占拠したテロ組織「マウテ・グループ」は国軍との激しい戦争状態に突入、2019年末まで戒厳令が続いた。REUTERS/Romeo Ranoco

<武装勢力と国軍との「戦争」で2年半も戒厳令が続いたマラウィ。その残党が再活動を目指し動き始めた>

2017年、フィリピン南部ミンダナオ島南ラナオ州の州都マラウィ市を約5カ月にわたって武装占拠したイスラム系テロ組織の残党が、新たな指導者の下でメンバーのリクルートなど組織の再編を図っていることが、国軍情報などで明らかになった。

これは10月16日にフィリピン軍のミンダナオ地区を担当する第103歩兵旅団のホセ・マリア・クエルポ司令官が、情報部などから寄せられたデータを分析したもので、治安当局は同組織の動向に警戒を強めるとともにテロ阻止に全力を尽くしているとしている。

中東のテロ組織「イスラム国(IS)」のフィリピンでの指導者とされたイスニロン・ハピロン容疑者率いる組織と地元ミンダナオのイスラム系テロ組織「マウテ・グループ」のメンバーらは2017年5月23日にマラウィ市を武装占拠して事実上の都市封鎖にして治安部隊との交戦を続けた。ドゥテルテ大統領は治安維持目的でミンダナオ島の一部に戒厳令を布告して対応した。

同年10月23日に軍の最終的な攻勢でマラウィ市は解放された。この間の戦闘で「マウテ・グループ」のマウテ兄弟(アブドラ・マウテ、オマル・マウテ両容疑者)やハピロン容疑者は殺害された。

その一方で多くの幹部を含めた「マウテ・グループ」の残党が同市から密かに脱出してミンダナオ島や周辺のスールー州ホロ島やバシラン島などに潜伏。既存のテロ組織などとの連携を強めると同時に新たなメンバー獲得による組織再編への懸念が指摘されていた。

こうした残党の動きなどを懸念し、掃討作戦を継続するためとして戒厳令はマラウィ解放後も継続され、2019年12月末にようやく解除された。

今回の陸軍のクエルポ司令官による情報は、こうした「マウテ・グループ」残党の動きが活発化していることを示しており、懸念が現実問題となっている現状を浮き彫りにしたといえる。

新指導者による新体制での再編活動

武装占拠されていたマラウィ市から脱出に成功した1人が今回、「マウテ・グループ」の新たな指導者になったと指摘されているファハルディン・ハジ・サタール(別名アブ・バカル)容疑者だ。

陸軍によるとサタール容疑者はイスラム教の指導者を意味する「エミル」の称号を正式には得ていないものの、ラナオ地方に点在する残党メンバーなどからは「実質的な新指導者」として認知されていると指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、FRB議長候補2氏を高評価 「オープン

ビジネス

FF金利先物、1月米利下げ確率31%に上昇 失業率

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人・失業率4.6

ビジネス

ホンダがAstemoを子会社化、1523億円で日立
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中