最新記事

2020米大統領選

バイデン勝利にラティーノ票の不安 民主党がハートをつかみきれない訳

THE FIGHT FOR THE LATINO VOTE

2020年10月16日(金)17時15分
エイドリアン・カラスキーヨ(本誌政治担当記者)

中南米系の心をつかみ激戦州を制したいバイデンだが、トランプとの支持率の差はなかなか開かない DAVID LIENEMANN-THE WHITE HOUSE/GETTY IMAGES, PHOTO ILLUSTRATION BY GLUEKIT

<激戦州に多く暮らす中南米系有権者──その支持獲得が4年前の二の舞いを回避するには重要だが、バイデンは彼らのハートをつかめていない。障壁となっているのは>

米大統領選で反ドナルド・トランプの大波に乗る民主党候補が各種の世論調査で優勢を保ち、特にラティーノ(中南米系)有権者の間では3分の2の支持を集めています──というのは4年前のヒラリー・クリントンの話。それでも彼女は勝てなかった。

二の舞いはごめんだから,民主党陣営は改めて気を引き締めている。11月3日の投票日は目前に迫り、手段を選ばぬ現職トランプの猛追で、挑戦者ジョー・バイデンのリードはじわじわと縮まっている。

バイデン陣営は表向き強気を装っているが、選挙戦の行方を左右するアリゾナやジョージア、テキサスなどの州でラティーノ有権者に対する働き掛けが足りないとされる。9月13日には陣営幹部のシモーヌ・サンダースも、てこ入れが必要なことを認めている。

実を言えば、てこ入れは8月末から始まっていた。そして9月に入ると選対副本部長のジュリー・チャベス・ロドリゲスや、クリストバル・アレックスをはじめとする幹部クラスが集まって、ラティーノ票の獲得に向けた作戦を練っている。

最も心配なのは大票田のフロリダ州だ。バイデンの同州、とりわけ民主党の期待する都市部のマイアミデード郡での支持率は4年前のクリントンを下回っている。ソーシャルメディアで「バイデンは社会主義者だ」という偽情報が出回っているのも痛い。中南米の左派系政権の国から逃げてきたラティーノ有権者は、この言葉に敏感に反応するからだ。

誰が次のアメリカ大統領になるかを占う上で、ラティーノ票の行方は大きな意味を持つ。世論調査機関のピュー・リサーチセンターによれば、ラティーノは現時点で最大の人種・民族集団であり、登録有権者数は3200万人(全有権者の13.3%)に上る。

彼らが最も多く暮らしているのはフロリダやアリゾナ、ネバダやテキサスのような激戦州だ(このうち4年前にクリントンが勝利したのはネバダのみ)。しかも8月段階では彼らの3人に2人(約64%)が、バイデン陣営からもトランプ陣営からも積極的な働き掛けは受けていないと回答していた(調査機関ラティーノ・デシジョンズ調べ)。

バイデン陣営は春の予備選でそれなりに疲弊していたから、ラティーノ向けの有料選挙広告に本腰を入れ始めたのは夏になってからだ。特に重視したのはアリゾナ、フロリダ、ペンシルベニア、ネバダ、ノースカロライナ、ミネソタ、テキサスの各州。6月23日から9月7日にかけては、スペイン語のテレビやラジオへの広告投入に352万ドルを費やし、トランプ政権は「新型コロナウイルス対策に失敗し」「ラティーノ社会を裏切った」が「バイデンは信頼できる誠実な人物だ」といったメッセージを発信した。投入費用はトランプ陣営の203万ドルを大幅に上回る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾閣僚、「中国は武力行使を準備」 陥落すればアジ

ワールド

米控訴裁、中南米4カ国からの移民の保護取り消しを支

ワールド

アングル:米保守派カーク氏殺害の疑い ユタ州在住の

ワールド

米トランプ政権、子ども死亡25例を「新型コロナワク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「AIで十分」事務職が減少...日本企業に人材採用抑制…
  • 9
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 7
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 4
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中