最新記事

軍事衝突

米仏ロ、ナゴルノ紛争の即時停戦を呼び掛け共同声明 トルコ反発

2020年10月2日(金)10時10分

ロシア、米国、フランスの3カ国は1日、旧ソ連のアゼルバイジャンとアルメニアの間で勃発したナゴルノカラバフ地域を巡る戦闘を巡り、即時停戦を呼び掛ける共同声明を発表した。ナゴルノカラバフ地域のイバニアンに着弾したロケット弾(2020年 ロイター/VAHRAM BAGHDASARYAN)

ロシア、米国、フランスの3カ国は1日、旧ソ連のアゼルバイジャンとアルメニアの間で勃発したナゴルノカラバフ地域を巡る戦闘を巡り、即時停戦を呼び掛ける共同声明を発表した。これに対し、トルコは反発している。

米仏ロは、旧ソ連時代から続くナゴルノカラバフ地域を巡る民族紛争の調停に向け欧州安保協力機構(OSCE)が設置した「ミンスクグループ」の共同議長国。声明で「関与する軍事勢力に対し、即時停戦を求める」とし、アルメニアとアゼルバイジャンに前提条件なしに和平協議を行うよう呼び掛けた。

こうした中、トルコのエルドアン大統領は3国の仲介に反発。トルコ議会で「米仏ロが約30年にわたりこの問題を放置してきたことを踏まえると、今になって停戦に関与することは受け入れられない」とし、「アルメニアの侵略者」がナゴルノカラバフから撤退しない限り長期的な停戦は実現しないと述べた。

ロシア外務省によると、ロシアのラブロフ外相はトルコ外相と電話会談を行い、事態の沈静化に向け協力していくことを確認した。

声明発表に先立ち、フランスのマクロン大統領とロシアのプーチン大統領は9月30日夜に電話会談を行い、停戦の必要性で合意。その数時間後、10月1日に入ってから米国のトランプ大統領も含め、3国で共同声明を発表した。

仏大統領府は、プーチン氏との電話会談で「トルコがシリア傭兵をナゴルノカラバフ地域に送り込んでいることに対する懸念」を共有したと表明。ロシア側の声明にこの件に関する言及はないが、タス通信は、ロシア大統領府はシリアとリビアからナゴルノカラバフ地域に兵士が送り込まれているとの疑惑は極めて危険と認識していると報じている。

フランスのマクロン大統領は、欧州連合(EU)首脳会議に出席するためにブリュッセルに到着した際、記者団に対し「シリアの兵士が(トルコ南東部の)ガズィアンテプを経由してナゴルノカラバフ地域に送られていることを示す情報を得ている。これは極めて深刻な情報で、これにより(ナゴルノカラバフを巡る戦闘の)状況は一変する」と述べた。ただ仏大統領府は証拠を示していない。

この件に関しては、駐ロシアのアルメニア外交官が9月28日、トルコが約4000人の兵士をシリア北部からアゼルバイジャンに派遣し、これらの兵士が戦闘に関わっていると述べていた。トルコ政府はこれを否定している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版 ハーバードが学ぶ日本企業
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月30日号(9月24日発売)は「ハーバードが学ぶ日本企業」特集。トヨタ、楽天、総合商社、虎屋……名門経営大学院が日本企業を重視する理由

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務省、コロンビア大統領のビザを取り消し 「暴力

ワールド

トランプ氏、マイクロソフトに幹部解任を要求 前政権

ワールド

アングル:米国目指すインド人学生に試練、トランプ政

ワールド

国連の対イラン制裁復活へ、安保理で中ロの延期案否決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国はどこ?
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 5
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 6
    砂糖はなぜ「コカイン」なのか?...エネルギー効率と…
  • 7
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    国立西洋美術館「オルセー美術館所蔵 印象派―室内を…
  • 10
    「不気味すぎる...」メキシコの海で「最恐の捕食者」…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがたどり着ける「究極の筋トレ」とは?
  • 4
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 5
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 10
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中