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日本女性のフルタイム就業率は過去30年で低下した

2020年10月8日(木)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

女性の就業率は上がったが、増えたのはパートワーカーだ itakayuki/iStock.

<女性を安い労働力とみなした80年代以降の日本社会のひずみは、現在の未婚化・少子化に繋がっている>

スウェーデンの教育学者エレン・ケイは「20世紀は児童の世紀」と言ったが、21世紀は女性の世紀、もっと限定すると「働く母親の時代」と言っていいだろう。

こういう意識は日本社会でも共有され、政府は毎年の『男女共同参画白書』で女性の就業率等のデータを公開している。その定番は、女性の労働力人口率の年齢カーブだ。このグラフは過去とくらべて形が変わっている。以前は結婚・出産期に谷がある「M字」型だったが、現在では谷がほとんどない。これをもとに、女性の社会進出が進んだと書かれることが多い。

だが、未婚で働き続ける女性が増えたことも考えられ、働き方の中身を問わなければならない。大きくはフルタイムとパートに分けられるが、日本では正規と非正規という従業地位区分もある。同時間、同じ仕事をしても、この2つのグループの間に大きな賃金格差があるのはよく知られている。

2017~20年に各国の研究者が共同で実施した『世界価値観調査』によると、日本の成人女性のフルタイム就業率は19.4%、パート就業率は25.8%で、パートの方が多い。欧米ではフルタイム就業率が高く、アメリカは41.1%、スウェーデンは51.7%と半分を超える。

日本も昔と比べたら数値は上がっている、と思われるかもしれない。では、80年代前半の第1回調査のデータと比較するとどうか。<図1>は、3カ国(日本、アメリカ、スウェーデン〔図中の瑞典〕)のフルタイム就業率の変化をグラフにしたものだ。

data201008-chart01.jpg

アメリカ、スウェーデンは上がっているが、日本は下がっている(28.2%→19.4%)。女性の社会進出が進むのは世界的潮流だが、日本の女性のフルタイム就業率は低下している。男女雇用機会均等法が制定される以前よりも低い。

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