最新記事

性犯罪

ナイジェリアで性暴力厳罰化──性犯罪者の去勢には疑問の声も

2020年9月23日(水)18時30分
松丸さとみ

犯罪抑止効果や人権問題など

性犯罪の刑罰として去勢を導入している国は他にもある。NYTによると、チェコでは暴力的な性犯罪者に対し、自由意思(刑罰としての強制ではなく)で去勢手術を受ける選択肢を与えているという。また米国の複数の州でも、化学的去勢(男性ホルモンであるテストステロンを薬物で低下させるもので、効果は永続的なものではない)を行う法律がある。

米国アラバマ州は昨年、13歳未満の子どもに性犯罪を犯した者に対して、化学的去勢を行う決定をした。その際、スティーブ・ハースト・アラバマ州議員は地元メディアに対し、「子どもに一生の傷を負わせるのなら、犯人も一生の傷を負うべき」だとして、化学的去勢ではなく手術による去勢の方が良かったと述べていた。

とはいえ、ナイジェリアのカドゥナ州での決定同様、性犯罪の刑罰としての去勢には他国でも反対意見が少なくない。たとえば、人権侵害だとする考えだ。モルドバの憲法裁判所は2012年、小児性愛の犯罪者に対して化学的去勢を行うのは、基本的人権の侵害だとして、化学的去勢を禁止する判決を下している(ロイター通信)。

インドネシアでは2016年、14歳の少女が集団レイプされ殺害された事件を受けて、小児性愛で有罪となった場合、化学的去勢、終身刑、死刑などと、より厳しく罰する法律を可決させた。この際も、人権団体などが「暴力で暴力を止めることはできない」や「化学的去勢で子どもを対象とした性犯罪は減っていない」などとして反対していた(英BBC)。

司法精神医学者のルネー・ソランティーノ博士はアラバマ州が化学的去勢を決定した当時、米ニュースメディアのヴォックスに対し、どの性犯罪者に対しても化学的去勢が効果があるわけではないと話していた。

ソランティーノ博士によると、子どもに対する性犯罪にはさまざまな理由があり、小児性愛はその一つに過ぎない。そのため同博士は、化学的に男性ホルモンを減らすだけでは、一部の性犯罪にしか効果がないと指摘。治療や医学的評価を合わせるべきだとの考えを示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仮想通貨が一時、過去最大の暴落 再来に備えたオプシ

ワールド

アルゼンチン中間選挙、米支援でも投資家に最大のリス

ワールド

NZ中銀、12月から住宅ローン規制緩和 物件価格低

ビジネス

先週以降、円安方向で急激な動き=為替で加藤財務相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中