最新記事

ロシア

欧米からの圧力を嫌い中国に接近するロシア

Russia Eyes East and West Border Threats, Looks to China for Closer Ties

2020年9月18日(金)17時30分
トム・オコナー

9月半ば、ベーリング海とオホーツク海の上空でロシア機にインターセプトされた米戦略爆撃機 RUSSIAN MINISTRY OF DEFENSE

<背景には、ベラルーシをはじめとする東欧や太平洋におけるNATOやアメリカとの覇権争いがある>

ロシアは極東および西の国境の先に複数の脅威を認め、それらの地域でアメリカなどの外国勢力による活動の抑止を試みると共に、中国との関係強化に乗り出している。

9月17日、ロシアの空挺作戦部隊はベラルーシ西部の(ポーランドとの)国境地帯で、ベラルーシ軍と合同演習を実施した。同日、ロシアのアンドレイ・ルデンコ外務次官は、ベラルーシ大統領選の不正疑惑やアルメニアとアゼルバイジャンの衝突について、ジョン・サリバン駐ロシア米大使と電話会談を実施。この中でサリバンに対して、「(アメリカによるこれらの地域での)内政干渉や不安定化の画策、一方的な仲裁はいかなる形でも容認しかねる」との考えを伝えた。

ルデンコはこの前日、駐ロシア中国大使の張漢暉ともベラルーシについて話をしている。ロシア外務省の公式声明によれば、この会談で2人は「さまざまな分野で、これまで以上に両国の交流を深めていくことについて意見交換を行った」という。

ロシアと中国はいずれも自国の国境付近で、外部からの侵略の兆候に目を光らせている。中国の王毅外相は16日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生して以来、初めてロシアの当局者たちとの直接会談に臨んだ後、この問題について国営メディアの新華社通信にこう語ったという。

合同演習で固い絆をアピール

「一部の国が一方的ないじめを行っている。他国の内政にいたずらに干渉し、中国とロシアを強く非難し、この2つの国の周辺地域の安全と安定を脅かしている」と王は主張。さらに「中国とロシアは山のごとく団結し、壊れることのない友情で結ばれている」と語った。

ロシアにとっての最も差し迫った懸念は、おそらくベラルーシだ。ロシアの長年の盟友であるベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、8月に行われた大統領選の不正疑惑とそれに抗議する反体制派の取り締まりについて、西側諸国から激しい批判を浴びており、事態の鎮静化に向けてロシア政府に支援を要請。ベラルーシもロシアも、ベラルーシと国境を接するNATOの軍事同盟が混乱をあおっていると批判している。

ロシアとベラルーシの軍は現在、ベラルーシとポーランドの国境地帯で砲弾の実射を伴う合同演習を行っている。ロシア国防省によれば、テロ対策が目的だと言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:G20議長国南ア、米不在乗り越え宣言採択

ワールド

地方版政労使会議を全都道府県で開催=高市首相

ワールド

アングル:トランプ氏が早々に仕切る中間選挙戦略、政

ワールド

対ロシア・中国制裁、西側経済危機の引き金に=ロスネ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中