最新記事

ロシア

欧米からの圧力を嫌い中国に接近するロシア

Russia Eyes East and West Border Threats, Looks to China for Closer Ties

2020年9月18日(金)17時30分
トム・オコナー

合同演習は2015年以降、ロシアとベラルーシ、セルビアの3カ国で行われており、約1500の部隊が参加し、100の設備が配備される予定だった。だが今年は、セルビアが直前に演習への参加を取りやめると発表。ベラルーシとの合同演習に反対していた「EU(欧州連合)からの多大で不当な圧力」(ベラルーシ当局)を受けたことが理由だという。

マイク・ポンペオ米国務長官もベラルーシ問題についてコメントし、特にロシアを強く批判している。ポンペオはイギリスのラーブ外相と会談を行った後、「全ての国、特にロシアに対して、ベラルーシの主権を尊重するよう」促したと語った。

だが西の国境に懸念を募らせる一方で、ロシア当局者たちは、東の国境でも防衛強化の必要性を感じている。

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は17日に幹部会議の中で、「東部戦略地域は軍事的・政治的に緊迫した状況が続いている」と指摘。「東部軍管区では、新たに発生した脅威をなくすために幾つかの措置を取る考えだ。特に重要な区域では部隊の増強を行っている」

ロシア政府も状況を注視している。ロシア国営のタス通信によれば、同国のドミトリー・ペスコフ大統領報道官は17日に、「地域外の勢力による軍事行動の活発化は、地域の安定化にとって悪影響だ」と警戒感を示した。

中国と懸念を共有

ショイグもペスコフも、外国勢力の脅威について詳しい説明はしなかったが、ショイグは航空・防空部隊の増強を求めた。このわずか数日前、ロシア海軍太平洋艦隊のMiG-31戦闘機と東部軍管区のSU-35S戦闘機がベーリング海およびオホーツク海の上空で、米空軍のB-1B戦略爆撃機に対して緊急発進を行っていた。

このような出来事は珍しいことではない。だがこの一件に先立つ8月下旬には、アラスカ沖で米航空宇宙防衛司令部(NORAD)がアラスカ沖でロシア軍の海上哨戒艦2機の進路を牽制する事態が発生し、ポンペオが太平洋などでの「ロシアの活動が増えている」と警告していた。

ロシアはまた、アメリカがヨーロッパとアジアにミサイル防衛システムを配備していることに、かねてより懸念を表明してきた。アメリカが中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱したことで、中距離ミサイルシステムについても懸念を募らせている。

こうしたなか中国も、東方での騒乱の気配を感じている。王毅は新華社通信に対して、「外部の一部勢力が、さまざまな理由をつけて地域内の国々の内政に干渉している。新たな『カラー革命』を煽る動きさえみられる」と語った。この『カラー革命』について、中国とロシアは「西側諸国の影響による一連の世界的な反乱」とみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中