最新記事

朝鮮半島

謝罪したのに領海での遺体捜索は許さないと北朝鮮、韓国は船39隻・航空機6機を投入

North Korea Warns South Away from Waters amid Search for Killed Official

2020年9月29日(火)18時05分
デービッド・ブレナン

南北朝鮮の軍事境界線、板門店で韓国側を監視する北朝鮮の兵士(9月16日) Korea Pool/REUTERS

<北朝鮮はフロートを焼却したのか、それとも射殺した男をフロートごと焼却したのか、うやむやでは治らない韓国人の怒り>

北朝鮮は9月27日、同国の領海で射殺された韓国政府職員の遺体捜索を行う韓国に対し、領海に入らないよう警告した。

韓国の海洋水産省に所属するその男性職員は、9月24日、北朝鮮側の海域を漂流しているところを同国軍に発見されて射殺されたと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。職員の氏名は公表されていないが、南北軍事境界線近くの海域で漁船の監視船で働いていたという。

韓国軍は、男性職員を射殺したあとに遺体を焼いたとして北朝鮮軍を非難したが、北朝鮮はこれを否定している。韓国は現在、現場付近で男性の遺体を捜索中だ。

北朝鮮の国営通信社、朝鮮中央通信が9月27日に報じたところによると、北朝鮮政府は声明を発表し、韓国による捜索活動は南北の緊張をさらに高めかねないと警告している。

朝鮮中央通信によれば、北朝鮮政府は声明で、「われわれはいかなる領海侵犯をも許さない。韓国に対して真剣に警告する」と述べた。「韓国に対し、西海(黄海)の軍事境界線を越えて北朝鮮側に侵入することを直ちにやめるよう求める。そうした行為は緊張を高めかねない」

「別の恐ろしい事態を招くぞ」

北朝鮮側は、韓国による捜索活動は「われわれのしかるべき警戒心をかき立て、別の恐ろしい事態を招く可能性がある」と警告を発した。韓国の朝鮮日報によると韓国当局は、行方不明になっている男性職員の捜索活動に船舶39隻と航空機6機を投じているという。

男性職員の殺害を受け、北朝鮮の朝鮮労働党委員長である金正恩は異例の謝罪を行った。韓国大統領府の国家安保室長、徐薫(ソ・フン)の発表によると、金は事件について「大変申し訳ない」と伝えたとされている。

金は9月25日、韓国の文在寅大統領に親書を送り、銃撃は「予想外」であり「遺憾」だと述べた。

AP通信が報じた通知文の説明によると、北朝鮮軍は、「浮遊用の器具(フロート)」につかまって漂流している男性を発見した。しかし、質問に答えようとしなかったため空砲を発砲。その後、逃げようとした男性に向けて実弾を10発射撃したという。

北朝鮮側は、発砲後に軍がフロートに近づいたところ、血痕はあったものの、男性の姿は確認できなかったとしている。そのうえで、自国の定める新型コロナウイルス安全対策に従い、そのフロートを焼却したという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン濃縮ウランの大半、攻撃免れた可能性=IAEA

ワールド

トランプ氏、イラン攻撃の成果誇示 原爆投下での戦争

ビジネス

米証取とSEC、上場企業の情報開示規則の緩和で協議

ワールド

アングル:イスラエルのネタニヤフ首相、イラン攻撃「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 5
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 6
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 7
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 10
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 8
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中