最新記事

空き部屋

人口減少の時代に増え続ける新築物件 全国378万の空き部屋をどう有効活用するか

2020年9月30日(水)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

しかし、借り手となる人間の数が減っているので賃貸経営も楽ではない。2018年の『住宅土地統計』によると、共同住宅の借家数(居住世帯あり)は1664万、賃貸用共同住宅の空き家数は378万となっている。両者の合算に占める後者の割合(空き部屋率)は18.5%となる。今では、賃貸アパート・マンションの部屋の約2割が空き部屋ということだ。

なお地域差もある。<表2>は、同じやり方で計算した、47都道府県の賃貸共同住宅の空き部屋率を高い順に並べたものだ。

data200930-chart02.png

5%刻みで色分けしたが、25の県で20%、8の県で25%を超えている。上位の栃木や山梨では、賃貸部屋の3分の1近くが埋まっていない。市区町村レベルで見たら、4割、5割という数値も出てくるだろう。

東京のような大都市はまだマシだが、地方での賃貸経営は厳しいようだ。だが、さら地は地方に多く、地主は業者にそそのかされ、税金対策でアパートを建てようという考えに傾いてしまう。三重県の田園地帯にレオパレスのアパートが立ち並ぶ「レオパレス銀座」をテレビが取り上げていたが、全国各地でこうした珍光景が見られるようになる。

需要もないのにアパートを建てるのは、①自然破壊、②景観悪化、③犯罪の温床化、という弊害をもたらす。こういう行動に地主を掻き立てるなら、さら地から高い税金を取るなど止めたほうがいい。ないしは税金免除の対象を、子どもの遊び場や保育所建設など、社会性のある土地供与に限ればいい。

上述のように、既に378万もの賃貸アパート・マンションの空き部屋がある。横浜市の人口と同じくらいだ。その一方で、住居に困っている人は数多くいる。コロナの影響で失職し、家賃を払えず「住」を失った人もいる。行政が家賃を補助する形で、使われないでいる378万もの空き部屋(住資源)を活用すべきだろう。

これから先は人口減少が続く。こういう時代にあって、住宅の乱築などはしない方がいい。なすべきは、既存のハコの活用だ。上手くデータベース化し、供給と需要をリンクさせれば、「住」に困る人は大幅に減るだろう。前に本欄でも書いたが、空き家が増えすぎて「タダでいいから、ハウスキーパーとして住んでくれ」と頼まれる時代が来る(「家はタダで借りる時代-0円借家は実際にある」2019年6月5日掲載)。こういう楽観を持てるようになるはずだ。

<資料:総務省『住宅土地統計』(時系列統計表)

<関連記事:世界で唯一、日本の子どものパソコン使用率が低下している
<関連記事:学力よりも性別で年収が決まる、日本は世界でも特殊な国

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「イランは合意望む」、プーチン氏はイラン

ワールド

国連事務総長、財政危機を警告 7月に運営費枯渇の可

ワールド

再送ウォーシュ氏、FRB議長就任前に理事ポスト着任

ワールド

トランプ氏「利下げに前向きと確信」、次期FRB議長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中