最新記事

感染症対策

11月の米大統領選前にコロナワクチン実用化? ゼロではない可能性

2020年9月12日(土)18時40分

米国で新型コロナウイルスのワクチンを11月3日の大統領選前に実用化できるかどうか、さまざまな角度から疑問が浮上しているA。写真は新型コロナウイルスワクチンのイメージ(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

米国で新型コロナウイルスのワクチンを11月3日の大統領選前に実用化できるかどうか、さまざまな角度から疑問が浮上している。ただ専門家は、それまでに安全性と効果があることを証明する十分な証拠を集められる可能性は、わずかながらもあると指摘する。

トランプ大統領は本選前にワクチン提供はできると繰り返し発言するとともに、米食品医薬品局(FDA)の中に存在する「闇の国家」が臨床試験を遅らせ、自身が再選を果たすのを阻んでいると主張している。

もちろんFDAは、意思決定はデータのみに基づいて行われると反論する形でトランプ氏の言い分を真っ向から否定した。8日には欧米の製薬9社がコロナワクチン開発は安全性を最優先して取り組み、有効性が十分に実証されてから当局に承認を申請するとの共同声明を発表。政治的な論争に惑わされず、人々の信頼に応える姿勢を打ち出した。

9日には英製薬大手アストラゼネカがオックスフォード大学と共同開発中のコロナワクチンについて、治験者に副作用が発生した問題で臨床試験を中断していると明らかにしたため、コロナワクチンの安全性に改めて関心が集まった。

10月終盤の可能性も残る

ただ他の企業からは最近になって、11月よりも前にワクチンが有効かどうかの答えを得られる可能性を示唆するコメントが出てきている。

ファウチ米国立アレルギー感染症研究所長はロイターに「11月より前に答えを出せるなら、それは本当に驚くべきワクチンになる」と語る。同氏によると、初期の試験結果が入手できる公算が大きいのは11月もしくは12月だが、10月終盤という目はまだ残っており「早々と十分な感染記録が集まれば、より早期に答えが出るという展開はあり得る」という。

ワクチンが承認の検討対象となるには、プラセボ(偽薬)に比べて少なくとも50%の有効性があると証明しなければならない。複数の政府高官の話では、そのためには被験者のうち最低150人の感染が記録され、感染者数はプラセボ群の方が2倍以上となることが必要だ。

また非常に有効なワクチンであれば、その結果はより短期間で分かってもおかしくない。米国で既に数千人規模の大規模臨床試験を実施し、現段階で開発競争の先頭を走る米製薬大手ファイザーと米バイオテクノロジー企業モデルナはいずれも、数十人の感染確認で効果が証明できるかもしれないとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米下院、エプスタイン文書公開巡り18日にも採決 可

ワールド

国連安保理、トランプ氏のガザ計画支持する米決議案を

ワールド

米大学の25年秋新規留学生数、17%減 ビザ不安広

ビジネス

ティール氏のヘッジファンド、保有エヌビディア株を全
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中