最新記事

映画

韓国映画界に変革の波? ジェンダー差別のない優秀10作品を政府と監督協会が選定

2020年9月22日(火)17時19分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

韓国政府と韓国監督協会は去年から今年上半期にかけて公開された韓国映画のうちジェンダー多様性を認めていると判断された優秀な推薦映画10本を発表した。JTBC News / YouTube

<儒教が根付いた韓国では、映画の世界でも男が主役でないとヒットしないと言われていたが......>

皆さんは、「ベクデルテスト」と呼ばれる基準をご存じだろうか?これは、1985年にアメリカの漫画家アリソン・ベクダル氏が作ったジェンダー差別をなくすための映画作品の基準である。ベクダル氏にちなんで、「ベクデルテスト」と呼ばれている。

クリアの基準はとてもシンプルだ。映画作品中「最低でも2人以上の名前付きの女性のキャラクターが登場」し、「女性キャラクター同士の会話」があり、「その会話は男性のこと以外」の内容かどうかである。映画の内容が男性中心に片寄ってしまわないよう、性別の平等化を守るためにできたテストである。

韓国映画におけるジェンダーバイアス

9月上旬、韓国文化体育観光部(韓国政府の「部」は日本では「省」に相当)と韓国監督協会が、去年から今年上半期にかけて公開された韓国映画のうち、このベクデルテストをクリアし、多様性を認めていると判断された優秀な推薦映画10本を発表した。今回はこの10本を通して韓国映画におけるジェンダーバイアスの状況を見てみたい。

韓国内でベストセラーになりつつ社会現象を巻き起こし、その後各国語で翻訳出版された小説『82年生まれ、キム・ジヨン』は、日本でも2018年末に出版され、発売時には多くのメディアで取り上げられたため、書名を聞いた方もいるかもしれない。

これを映像化した映画は韓国で2019年の10月に公開され、日本ではこの10月9日に公開予定である。韓国女性として当たり前だと受け入れていた日常に、違和感をもちはじめた女性・ジヨンに共感する女性が後を絶たず、高い人気を得た。

今年の6月、ひと足先に日本公開され話題となったのが、第69回ベルリン国際映画祭(ジェネレーション14プラス部門)など、世界中の映画祭で合計59冠を受賞した映画『はちどり』だ。自分に厳しい父、暴力的な兄を持ち、学校でも周囲にいまいち馴染めない14歳の少女ウニは、ある日漢文の先生ヨンジと出会い、世界の見方が広がっていく。

監督のキム・ボラ氏は、81年生まれの女性である。『82年生まれ、キム・ジヨン』の主人公と1歳違いであり、また79年生まれの筆者とも同世代だ。日本人である筆者だが、二十歳まで日本で育ち、20~30代をほぼ韓国で過ごした身としては、共感できる部分が多く感じた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

FIFAがトランプ氏に「平和賞」、紛争解決の主張に

ワールド

EUとG7、ロ産原油の海上輸送禁止を検討 価格上限

ワールド

欧州「文明消滅の危機」、 EUは反民主的 トランプ

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中