最新記事

コロナと脱グローバル化 11の予測

ファーウェイ・TikTokが対中制裁を生き抜く理由

THEY WILL SURVIVE

2020年8月26日(水)16時50分
高口康太(ジャーナリスト)

中国相手の商売が封じられた米国企業も傷ついている。だとすれば米中デカップリング(切り離し)にどれほど意味があるのか。さらに制裁によって中国企業がより内向きになり世界との接点が減れば、国際社会は中国への影響力を失ってしまう。

虚構の上の米中関係だった

本来は中国との関係を保つべきだが、対立には仕方がない部分もある。そもそも価値観・イデオロギーが異なり、潜在的な競争関係にある米中が密接な経済関係を結んできたほうが異常なのだ。今までは「中国は豊かになれば民主的に変わるので、それまでは......」という虚構がよりどころとされてきたが、現実に直面した今は新たな付き合い方を模索する必要がある。誰にとってもうれしくない面倒な作業だとしても、だ。

模索がどこに帰着するのか、現在はまだ見えない。交渉と対立に疲れ果てて現状維持になるのか、米中の経済圏が真っ二つに割れるのか、それとも異なるイデオロギーの国家同士が経済的結び付きを得る新たなルールを見いだすのか。過去数十年にわたり、グローバリゼーションが世界経済を発展させる主要な力となってきたことを考えれば、第3の選択肢が実現することを期待するしかない。赤い動画アプリであっても安心してダンスを踊れる世界は、果たして到来するのだろうか。

<2020年9月1日号「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集より>

【関連記事】コロナでグローバル化は衰退しないが、より困難な時代に突入する(細谷雄一)
【関連記事】中国企業は全て共産党のスパイ? 大人気TikTokの不幸なジレンマ

【話題の記事】
新型コロナで激変する世界の航空業界、その未来は中国が決める
限界超えた米中「新冷戦」、コロナ後の和解は考えられない
中国は「第三次大戦を準備している」
ヌード写真にドキュメントされた現代中国の価値観

20200901issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年9月1日号(8月25日発売)は「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集。人と物の往来が止まり、このまま世界は閉じるのか――。11人の識者が占うグローバリズムの未来。デービッド・アトキンソン/細谷雄一/ウィリアム・ジェーンウェイ/河野真太郎...他

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中