最新記事

テロ

比連続自爆テロ、爆弾製造の容疑者は脱出か 実行犯はイスラムの教えを逆手に利用?

2020年8月31日(月)19時55分
大塚智彦(PanAsiaNews)

24日に起きた連続自爆テロの爆発時の画像 ABS-CBN NEWS / YouTube

<昨年1月に続き今回も女性が実行犯。未然に防げなかった理由にはイスラム教の教義も関係するという>

フィリピン南部スールー州ホロ島のホロ市中心部で8月24日に発生した連続自爆テロ事件。犯行への関与が濃厚とされるフィリピンのイスラム教テロ組織「アブ・サヤフ」の爆弾製造専門家で、今回自爆テロ犯が使用した爆弾の製造にも関わったとされるムンディ・サワジャン容疑者は、仲間のインドネシア人爆弾専門家2人とともにすでにホロ島から脱出している可能性が高いことが分かった。

サワジャン容疑者は「アブ・サヤフ」のメンバーの中でも最重要指名手配の1人。24日の事件発生後に陸軍、国家警察などがホロ市周辺をはじめとするホロ島全域に敷いた特別警戒・捜査網をかいくぐって、インドネシア人の仲間2人と一緒にすでに脱出したか、事件発生直前にすでにホロ島から移動していた可能性が国家情報調整庁(NICA)によって指摘されている。

NICAがミンダナオ島のスールー州に近いサンボアンガ州のサンボアンガ市長などにおこなった説明によると、サワジャン容疑者の逃亡先としてホロ島北東のバシラン島やサンボアンガ市方面などが考えられるとしている。

24日の自爆テロ発生を受けてフィリピンと海を隔てるマレーシアはボルネオ島周辺海域での警戒監視を強化して、フィリピンから海路密航や脱出を試みる「アブ・サヤフ」関係者の入国阻止に全力を挙げていることなどから、マレーシア領への逃亡は現時点では可能性は低いと治安当局ではみているという。

マラウィ市武装占拠残党リーダーの甥

フィリピン治安当局や情報機関によるとサワジャン容疑者は、2017年5月から10月までミンダナオ島南ラナオ州マラウィ市を武装占拠した中東のテロ組織「イスラム国(IS)」シンパや地元反政府武装勢力などの残党を率いてフィリピン南部で活動中とされるハティブ・ハジャン・サワジャン容疑者の甥とされる人物である。

2019年1月にホロ市内で起きたインドネシア人夫妻によるキリスト教会での連続自爆テロの際に使用された爆弾製造にも関与するなど「アブ・サヤフ」の活動拠点を転々としながら爆弾の製造とテロ支援をしてきたといわれる。

24日に発生した連続自爆テロで最初の現場となった食料品店兼食堂「パラダイス」の表通りに面した場所に爆発後クレーターができていたことから、その場所で容疑者が自爆したとみられ、使用された爆弾の強い威力から治安当局は事件発生直後から「このような強力な爆弾を製造できる人物はこの地域ではサワジャン容疑者以外には考えられない」としてその身柄を確保するために捜査網が敷かれていた。

サワジャン容疑者に関しては6月29日にその身柄確保を目指して捜査に向かおうとしていた陸軍の私服諜報部員4人が、ホロ市内の路上で「テロリストと誤認」したとされる警察官9人によって一方的に射殺される事件も起きている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 9
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中