最新記事

ロシア反体制派

ナワリヌイはやはり「毒を盛られた」、だが生きている

German Doctors Refute Russia, Say Opposition Leader Navalny Was Poisoned

2020年8月25日(火)17時40分
マシュー・インペッリ

ロシアの病院から運び出されるナワリヌイ(8月22日) Alexey Malgavk-REUTERS

<「プーチンの毒殺」は失敗したのか?>

ドイツ・ベルリンにあるシャリテー大学病院の医師らは8月24日、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイについて、「コリンエステラーゼのはたらきを阻害する」物質による中毒症状が出ていると認めた。

シャリテー大学病院は、ツイッターに投稿した声明のなかで、「アレクセイ#Navalny(ナワリヌイ)は、#charitberlin(ベルリン・シャリテー病院)で集中治療を受けており、現在もまだ、治療のための人工的な昏睡状態にある」と書いている。

「臨床的知見では、コリンエステラーゼ阻害剤のグループに属する物質による中毒症状が示唆される。具体的な物質はまだ不明で、さらに広範な検査を開始した」

同病院のツイートによれば、毒物の影響は、「いくつかの独立系試験所で実施された、複数の検査により確認された」という。

「この診断の結果、患者は現在、解毒剤のアトロピンによる治療を受けている」と同病院は続けている。

コリンエステラーゼ阻害剤のなかには、殺虫剤や化学兵器等として使われるものがあるほか、アルツハイマー病の治療薬も存在する。アルツハイマー協会(ALZ.org)によれば、「コリンエステラーゼ阻害剤は、記憶、思考、言語、判断、その他の思考プロセスに関連する症状を治療するために処方される」という。この種類の薬に伴う副作用としては、「悪心、嘔吐、食欲減退、排便頻度の増加」などがある。

害虫駆除剤と似た物質?

一方、コーネル大学、ミシガン州立大学、オレゴン州立大学、カリフォルニア大学デービス校の研究者らが発表した報告書では、次のように説明されている。「有機リン(OP)系やカーバメート(CM)系などある種の化学殺虫剤のグループは、コリンエステラーゼのはたらきに干渉、もしくは『阻害』することで、害虫に対して効果を発揮する。コリンエステラーゼ阻害剤の効果は害虫駆除を意図したものだが、こうした化学物質の一部は人間に対しても毒性を持ち、有害となる場合もある」

シャリテー病院はプレスリリースのなかで、ナワリヌイの治療にあたっている医師団は、「ナワリヌイの妻とつねに連絡をとれる状態を保っている」と述べている。「患者の妻との綿密な話しあいを経て、シャリテー病院は、症状の詳細を公表するという決断が、患者本人の希望に沿っていると確信している」

シャリテー病院のプレスリリースが発表される直前、ドイツ政府は、ナワリヌイが毒を盛られた可能性が「きわめて高く」、警護を強化する必要があると述べた。

<参考記事>ロシア反体制派ナワリヌイ、何度も毒物攻撃を生き延びてきた
<参考記事>ロシアがベラルーシに軍事介入するこれだけの理由

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシア、対米関税交渉で「レッドライン」は越えず

ビジネス

工作機械受注、6月は0.5%減、9カ月ぶりマイナス

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド

ビジネス

スターバックス中国事業に最大100億ドルの買収提案
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中