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インド洋の要衝スリランカは、連続爆破テロで親中国に回帰した

ISIS Church Bombs Help China Gain Indian Ocean Ally to America's Chagrin

2020年8月24日(月)19時00分
トム・オコナー

報道官によると、米国務省はスリランカのような国々に対して、「別のアプローチ」を奨励している。「持続可能な成長をもたらし、貧困を減らし、技術革新を促進した実績と透明性のある民間主導の投資やビジネスモデルを優先」することだ。

今年2月、大統領に当選して以来初のインド訪問中に、一帯一路構想について批判されたマヒンダ・ラジャパクサは、スリランカは一帯一路の恩恵を受けたと地元ヒンドゥスタン・タイムズ紙に語った。「中国に対するスリランカの債務は、対外債務全体の12%に過ぎず、債務不履行にもなってない。その資金は全て、わが国のインフラの構築に使った」

中国大使館は本誌の取材に対し、当時の外務省報道官の趙立堅(チャオ・リーチエン)の発言を引用した。

「中国とスリランカは、誠実な相互援助と永続的な友好関係に基づく戦略的協力パートナーシップを共有している」と、趙は記者会見で語った。「中国はスリランカの開発ニーズに基づいて、インフラ整備や国民の生活に資する主要プロジェクトを支援するための融資を行った」.

趙はさらに、中国政府は受け入れ国の債務の持続可能性と政府の意志に注意を払っていると主張した。中国の資金は、スリランカ政府が新しいインフラを構築するハードルを乗り越え、独自の開発を促進する役に立ったと言う。

恩恵と懸念のはざまで

スリランカ国民はといえば、大きな利益と大きな懸念の両方を感じている。

「スリランカは中国の一帯一路構想の要諦のひとつとみなされている」と、スリランカのケラニヤ大学博士課程に在籍するマヤ・マフエランと、中国海洋大学に在籍していたヤシル・ラナラジャは本誌に語った。2人は「一帯一路構想スリランカ」というNGO組織の共同ディレクターだ。

「だから、中国はスリランカへの投資に熱心だ。スリランカが中国と同じビジョンをめざして協力するならば、中国の技術、才能、豊富な経験、ノウハウによる恩恵を受ける絶好の機会となるだろう」

「しかし、スリランカの一帯一路プロジェクトの一部は、透明性と経済的持続可能性の欠如で批判されている」と2人は続け、同国で論争の的になっている南部ハンバントタ港のケースを挙げた。中国の融資で開発したこの港は完成後も債務返済に十分な利益があがらず、中国側に運営権を差し出さなければならなかった。

中国の投資の動機は「主に世界経済の相互関係を高めるためにつながりを強化すること」だと2人は指摘したが、「中国の経済的、安全保障上の利益を強化する効果もあるかもしれない」ことは認めた。

<参考記事>スリランカで準独裁体制が復活すれば、海洋覇権を狙う中国を利するだけ
<参考記事>中国に懐柔された二階幹事長──「一帯一路」に呑みこまれる日本

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