最新記事

事件

重体のロシア野党指導者ナワリヌイ、独に移送へ 医師らは毒物説否定

2020年8月22日(土)10時10分

モスクワに向かう旅客機の中で体調不良を訴えシベリアののオムスクの病院に緊急搬送されたロシア反体制派指導者ナワリヌイ氏(写真)について、関係者は8月21日、同氏の欧州への搬送をロシアのプーチン政権が阻んでいると批判した。2018年11月15日、フランスのストラスブールで撮影(2020年 ロイター/Vincent Kessler)

モスクワに向かう旅客機の中で体調不良を訴えシベリアのオムスクの病院に緊急搬送されたロシア反体制派指導者ナワリヌイ氏を巡って、ロシアの医師団は21日、治療のため同氏をドイツに移送することを認めた。一方、同氏が何者かに毒を盛られたとの見方については否定した。

オムスク病院のカリニチェンコ医師は「ナワリヌイ氏を別の病院に移送することに反対しないことを医師団として決めた」とした上で、ナワリヌイ氏は数時間以内に移送されると述べた。

またムラホフスキー主任医師は、ナワリヌイ氏の衣服や指から工業用化学物質が検出されており、毒は盛られていないと判断されると表明した。

病院スタッフによると、ナワリヌイ氏は、生命にかかわるような危機に直面しておらず、誘発性の昏睡状態にあり、脳は安定しているという。

ナワリヌイ氏の広報担当者は、同氏が22日朝に移送される見通しと述べた。

医師団は当初、ナワリヌイ氏が依然として意識不明で容体が安定せず、動かせば命の危険があるとして、移送に難色を示していた。

これに先立ち、妻のユリヤ氏らは、ナワリヌイ氏をドイツに移送して治療を受けることを希望。ユリヤ氏は、プーチン大統領宛てに対応を求める嘆願書を提出し「夫をドイツへ移送することを認めていただけるよう、公式に要請する」と訴えた。

ナワリヌイ氏は20日、空港で紅茶を飲んで搭乗し、機中で体調が急変。飛行機はシベリアに緊急着陸し、救急搬送された。同氏の関係者は、毒を盛られたとみている。

ナワリヌイ氏の広報担当者はシベリアの病院は医療体制が不十分でナワリヌイ氏は生命の危険に陥っているとして政権を批判。広報担当者はソーシャルメディアに「(ナワリヌイ氏の)移送禁止は、それを認めた当局と医師団に命を委ねようとしていることになる」と投稿した。

報道担当者によると、医師団は当初は移送に同意していたが、直前になって翻意した。「この決定はもちろん、医師団ではなくクレムリンが下したものだ」と指摘した。

ロシア大統領府は20日、欧州の医療機関への移送要求があれば、医療当局が直ちに検討すると説明していた。

主治医は記者団に、ナワリヌイ氏を欧州の医師に引き渡す前に解決すべき多くの法的問題があると説明。欧州と比べて遜色ない医師団がモスクワから治療のため到着していると話した。

ナワリヌイ氏の関係者らによると、ある警官が、同氏から非常に危険な物質が検出されたと話した。その物質は、同氏の周囲にいた人にとっても危険で防護服を着用する必要があるほどだったという。ロイターはこの情報を確認できていない。

関係者は、ロシア当局は、同氏から毒物の痕跡が消えるまで時間稼ぎしようとしていると指摘した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる


20200825issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、ドイツで派遣社員300人の契約終了 再雇用

ビジネス

円債残高を積み増し、ヘッジ外債は縮小継続へ=太陽生

ワールド

中国とインドネシア、地域の平和と安定維持望む=王毅

ビジネス

ユーロ圏経常収支、2月は調整後で黒字縮小 貿易黒字
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中