最新記事

感染対策

トランプの感染対策チームで集団免疫論者の医師が台頭

Trump Brings New 'Herd Immunity' Doctor Onto Coronavirus Task Force

2020年8月17日(月)15時50分
ベンジャミン・フィアナウ

最近では、新型コロナ対策に関する会見でトランプに立ち会っているのはアトラス博士(右)だけだ(8月12日)Kevin Lamarque‐REUTER

<トランプが感染対策のアドバイザーとして新たに起用したアトラス医師は、感染予防より感染を広げるアプローチを提唱。ファウチら常識的な対策チームの影響力はさらに小さくなりそうだ>

ドナルド・トランプ大統領の新型コロナウイルス対策チームに、新たに加わったスコット・アトラス博士は、これまで頻繁に保守系テレビ番組FOXニュースに登場、新型コロナについて「メディアは騒ぎ過ぎ」と批判してきた人物だ。

過去1週間の新型コロナに関するホワイトハウスの会見で、トランプの傍に控えていた医師はアトラスだけだった。

かつてトランプの会見に立ち会っていた新型コロナ対策チームを率いる国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長、デボラ・バークス医師の姿はどこにもない。この事は、彼ら専門家とトランプ政権との溝が広がったことを示している。ファウチらは、コロナの脅威を軽視するトランプの意見に真っ向から反対し、マスクの着用やソーシャルディスタンスを支持し、学校再開に反対したことで、保守派やトランプ支持者からも敵視されるようになっている。

アトラスは元スタンフォード大学医療センター神経放射線学部長で、感染対策は現状より緩やかでいいと主張。それをトランプは公的に支持している。

7月初めにFOXニュースに出演した際、アトラスはアメリカが休校した学校を再開しないのは異常で、それはニュースメディアがパンデミック「ヒステリー」を生み出したからだと語った。

みんなで感染すれば怖くない?

政府によるロックダウンのせいで、「自然感染による集団免疫」の獲得が妨げられている、とアトラスは批判する。地域の大半の人が感染して免疫ができれば、感染拡大をスローダウンできる。その結果、免疫のある人だけでなく地域の住民全員が守られる。

アトラスは以前、子供はウイルスに対して本質的に「リスクゼロ」であるため、若くて健康なアメリカ人がコロナウイルスにさらされるのは「良いこと」だと唱えていた。

だがAPの記事で、医学の専門家らがこの説を否定。その根拠として、新型コロナウイルスに感染した若年成人の35%が、陽性になってから2~3週間後の時点でも健康な状態に戻っていなかったという研究を引用した。

トランプはアトラスの対策チーム入りを発表する際に、「スコットはとても有名で、非常に尊敬されている」と記者団に語った。「すばらしいアイデアをたくさん持っているし、これまで私たちがやったことについても高く評価してくれている」

ホワイトハウスのジャッド・ディアー報道官は、アトラスを「世界的に有名な医師」と紹介する声明を発表した。

<関連記事>欧州各国で感染が急増するなか、「集団免疫戦略」のスウェーデンは収束へ
<関連記事>新型コロナ回復患者の抗体水準、2─3カ月で急低下 集団免疫の獲得は無意味か?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中