最新記事

集団免疫

欧州各国で感染が急増するなか、「集団免疫戦略」のスウェーデンは収束へ

Sweden Sees COVID-19 Cases Plummet as Rest of Europe Suffers Spike

2020年7月31日(金)13時30分
スー・キム

スウェーデンでは他国のようなロックダウンの措置は取られなかった Stine Stjernkvist/TT News Agency/REUTERS

<高齢者に多くの死亡者が出た集団免疫戦略だが、ロックダウンなしでも感染抑制には成功したのか?>

欧州各国で新型コロナウイルスの感染が急増し、第2波への警戒が高まるなか、ロックダウン(都市封鎖)を行わない「集団免疫戦略」を取ってきたスウェーデンでは、6月後半以降、新規の感染者数が大きく減少している。

WHO(世界保健機構)が今週29日に発表した最新の報告によると、29日までの14日間に確認されたスウェーデンの人口10万人あたりの新規感染者数は、それ以前の14日間と比べて54%減と大幅に減少した。

一方、スペイン、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダなど他の欧州各国では、同時期の比較で新規感染者数が40~200%増加した。

スウェーデンでは、直近7日間の新規感染者数の平均値が6月29日以降、下がり続けている。また一日の新規感染者数も、6月24日に過去最多の1803人が確認されて以降は、大きく減ってきている。

直近7日間の死亡者数の平均値で見ても、スウェーデンでは1日の死亡者数が最多の115人となった4月15日前後をピークに減少傾向にある。最新の直近7日間の感染者数の平均値は154人、死亡者数の平均値は2人だ。

この戦略は「成功した」?

しかしスウェーデンは、人口10万人あたりの死亡者数で見ると世界で第8位と高い順位にある。累計感染者数で世界第1位のアメリカと第2位のブラジルよりもその順位は高い。

同国の公衆衛生機関の主任疫学者で、ロックダウンを用いない「集団免疫戦略」を先導してきたアンデシュ・テグネルは、先週英ニュースサイト「UnHerd」のインタビューに答え、この戦略が「かなりの程度で」成功したと語った。

スウェーデンでは、他国のようなロックダウンは実施されていないが、テグネルは「社会全体の移動は大きく減少した。北欧諸国で比較すると、スウェーデンの国内移動は近隣国と同じくらい減少している。スウェーデンで実施された様々な自発的な対策は、他国の完全なロックダウンと同様に効果的だった」と語った。

そして「現在、新規感染者数は急速に減少している。医療体制は継続的に機能している。患者を収容する病床は常に余裕があり、病院が混雑して医療が逼迫する事態にもなっていない」と話している。

<関連記事:スペイン、フランス、ドイツに感染第2波? 非常事態解除が仇

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ソマリランドを初の独立国家として正式承

ワールド

ベネズエラ、大統領選の抗議活動後に拘束の99人釈放

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡り国民投票実施の用意 ロシ

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中