最新記事

米中関係

米政府、中国総領事館の閉鎖命令 トランプ「追加閉鎖もあり得る」

2020年7月23日(木)13時08分

米政府はテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命じた。中国外務省によると、通告があったのは21日で、3日以内に閉鎖するよう求められた。写真は同総領事館(2020年 ロイター/ADREES LATIF)

米政府はテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命じた。中国外務省によると、通告があったのは21日で、3日以内に閉鎖するよう求められた。関係筋の情報では、中国は対抗措置として湖北省武漢市の米国総領事館の閉鎖を検討しており、米中関係は急速に悪化している。

トランプ大統領は、他の中国在外公館の閉鎖も常にあり得るとの見方を示した。

中国は米国の措置を強く非難。外務省の汪文斌報道官は定例会見で「総領事館の閉鎖通告は一方的で前例のないエスカレートした行動だ」とした上で「われわれは米国にこの誤った決定を直ちに取り消すよう求める。米国が間違った道を進むというなら中国は断固とした対抗措置を取る」と言明した。


また華春瑩報道官はツイッターで「米政府による悪口や憎悪のあおりのおかげで、ワシントンの中国大使館に爆破予告や殺害予告が届いている」と明らかにした。

一方、米国務省は中国総領事館の閉鎖について、米国の知的財産権と個人情報の保護が目的と説明。ポンペオ国務長官は、中国が米欧の知的財産権を窃取しており、それによって何十万人もの雇用が犠牲になっているとし、「トランプ大統領も散々口にしているが、われわれはこうしたことが繰り返されることを容認しない」と述べた。

さらに「中国が態度を改めない場合、米国の国民や国家安全保障、国内の経済や雇用を守るために行動する」と強調した。

トランプ大統領は22日の会見で記者の質問に対し、米国内にある他の中国の在外公館閉鎖は「いつでもあり得る」と述べた。また、ヒューストンの総領事館で煙が上がったことについて「書類を燃やしていたのだろう。どういうわけか疑問に思う」と語った。

ヒューストンの総領事館では21日、煙が上がったため地元の消防隊が駆けつけた。複数の米政府当局者は、書類が燃やされていたという情報があると述べた。

米紙ニューヨークタイムズによると、スティルウェル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)はヒューストンの中国総領事館について、中国軍が学生を米大学に送り込み軍事面での優位を高める企ての「拠点」になっていたと語った。

スティルウェル氏によると、同総領事館の総領事と外交官2人が最近、ヒューストン空港で中国行きのチャーター機出発を待っていた際に空港内で不審な行動に関与したとして拘束されたという。

コンウェイ米大統領顧問は、今回の措置の趣旨を問われ、トランプ大統領が新型コロナウイルスを巡る中国の対応に引き続き不満を抱いていると表明。「中国からは依然情報が届いておらず、感染者や死者の数なども不明だ」とした。

米上院情報委員会の委員長代行を務めるルビオ上院議員(共和)はFOXニュースに対し、ヒューストンの中国総領事館が巨大なスパイ活動のいわば窓口に相当し、中国は「財界を利用して議会や政界の要人らへの影響力を深めようとしている」と指摘。総領事館の閉鎖は遅きに失したと述べた。

最近まで米国家情報長官代行を務めていたリチャード・グレネル前駐独米大使は、米国はIT(情報技術)産業が盛んなサンフランシスコの中国総領事館も閉鎖する可能性があるとの見方を示した。

同氏はロイターに対し、「私なら(ヒューストンとサンフランシスコの)両方を閉鎖しただろうが、まず1カ所から始めるのも理にかなっている」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・米当局、在ヒューストン中国領事館閉鎖を通告 領事館側は敷地内で文書を焼却か
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・中国・三峡ダム、警戒水位を16m上回る 長江流域で支流河川に氾濫の恐れ、住民数千人が避難路
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然


20200728issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中