最新記事

事件

韓国高裁、世界最大の児童ポルノサイトをダークウェブで運営した男を擁護? 米検察の引き渡し要請を却下

2020年7月21日(火)11時55分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

ソウル高裁の決定に国内外から批判

刑の軽さ、またアメリカへの引き渡し拒否が大きく報道されると、海外からの批判も相次いだ。イギリスBBCのソウル特派員であるローラ・ビッカー記者は、自身のTwitterで「韓国検事は、空腹のため卵18個を盗んだ男性に18カ月型を求刑した。 そして、世界最大の児童ポルノサイトを運営したソン・ジョンウにも同じ期間の刑量を下した」と、皮肉めいたツイートを投稿した。さらに、「その(サイトの)犠牲者の中には、生後6カ月になったばかりの赤子もいた」と続けている。

続いて今月6日NYタイムズ紙は、「このサイトを通じ、児童性搾取動画をダウンロードしたアメリカ人男性でさえ懲役5〜15年を宣告された」とソン・ジョンウの刑期の短さを批判した。

韓国の世界日報によると、児童性搾取根絶を訴える非営利団体ECPAT Internationalの研究事業部局長マリーロール・ルミノーは、インタビューで「アメリカならば数十年の判決が言い渡されるだろう。韓国は児童性搾取による犯罪の法的処置が軽すぎる」と語ったと報じている。

韓国の市民団体は英独に引き渡し要請するよう求める

もちろん、韓国国内でも判決結果を批判する声が高まり、今月7日には最高裁判所前で女性団体を中心としたグループがデモを行った。またアメリカ以外の海外にも、このサイトの利用者や被害者がいて、韓国と犯罪者引き渡し条約を結んでいるイギリス、ドイツなどに、ソン・ジョンウの引き渡し要請をしてほしいと働きかけもはじめている。

この騒動を通して、韓国は性搾取に寛大すぎると世界からブーイングを受けているが、日本でも同じような批判は少なくない。特に今回の被害者は未成年者である。これを機にこのような犯罪が二度と起こらないよう世界的に取り締まりの強化を望むとともに、被害者の心のケアとプライバシーをしっかりと守って捜査を進めてほしい。

【話題の記事】
・感染防止「総力挙げないとNYの二の舞」=東大・児玉氏
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、21日の新型コロナ新規感染230人程度 13日連続で100人以上続く
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然


20200728issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

スイス銀行資本規制、国内銀に不利とは言えずとバーゼ

ワールド

トランプ氏、公共放送・ラジオ資金削減へ大統領令 偏

ワールド

インド製造業PMI、4月改定値は10カ月ぶり高水準

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む LNGの価格下落な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 8
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中