最新記事

日本政治

ポスト安倍レースで石破氏に勢い 二階幹事長が支持表明、鍵握る麻生副総理

2020年6月23日(火)11時32分

ポスト安倍を巡る与党内議論が流動化している。首相が後継者として期待してきた岸田文雄政調会長に対する支持が広がりを欠いているためだ。その中で各種世論調査で人気の高い石破茂元幹事長に二階俊博幹事長が支持を明言し、これを菅義偉官房長官も側面支援。写真は都内で2015年7月撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

ポスト安倍を巡る与党内議論が流動化している。首相が後継者として期待してきた岸田文雄政調会長に対する支持が広がりを欠いているためだ。その中で各種世論調査で人気の高い石破茂元幹事長に二階俊博幹事長が支持を明言し、これを菅義偉官房長官も側面支援。次期首相は岸田氏よりも石破氏が有利との見方が与党内で浮上しつつある。これまで安倍首相と共に岸田氏を支持してきた麻生太郎財務相兼副総理の意向が注目されつつある。

安倍首相の自民党総裁任期まで1年以上あるにもかかわらず、ポスト安倍が取り沙汰されるのは、首相が安倍政権を批判し続けてきた石破氏が後継者となるのを嫌い、岸田氏に禅譲を目指すのであれば、任期前の辞任が必要とみられてきたためだ。自民党の党則で、総裁が任期満了前に辞任すれば、石破氏の人気の高い地方票の影響が少ない形で、主に国会議員の意向で総裁を決められるためだ。

首相が退陣し得るタイミングとして、1)東京五輪・パラリンピックが新型コロナウイルスの世界的な感染継続懸念により今秋に中止された後、2)米大統領選で安倍首相と良好な関係を構築してきたトランプ氏が落選した場合──などが想定されている。

このため首相が所属する党内最大派閥の細田派と麻生派、岸田派が連携し、安倍首相が任期中に退陣すれば「岸田政権」への禅譲は可能とされていた。

しかし、ここにきて自民党内では岸田氏の不人気が表面化し、このシナリオに黄信号がともり始めた。新型コロナ対策の2020年度第1次補正予算案策定では、困窮者向けに30万円給付を打ち出したが、閣議決定後に公明党の反対で配付対象を全世帯一律に広げた10万円給付に差し替えられ、「リーダーシップがない」(自民中堅)とみられ、「真面目だが、演説が面白くない」(自民党幹部)などと言われ始めた。

一方、報道各社の世論調査で軒並みポスト安倍人気首位に立つ石破氏については、従来「与党内では人気はない」(細田派)とされてきたが、二階幹事長が8日、「将来さらに高みを目指して進んでいただきたい期待の星の一人だ」「自民党でも最も古い最も経験豊かな政治家の一人だ」と持ち上げ、支持を明確にしたことで、流れが変わってきた。

従来から岸田氏のリーダーシップ不足を批判してきた菅義偉官房長官も二階氏と石破氏の接近を「裏でつないだ」(自民党幹部)とされる。石破氏支持を公言しないのは、「官邸の要職についているから控えている」(二階派幹部)とみられる。

その中で、岸田氏不利との観測は広がりを見せている。首相のお膝元の細田派内で下村博文選挙対策委員長、稲田朋美党幹事長代行らが、岸田氏に対抗してポストコロナ時代を見据えた政策勉強会を立ち上げたほか、自民党内の票読みでは「岸田氏は結局、岸田派からしか支持を得られないことになる」(閣僚周辺)との試算もあるようだ。このため「国会議員だけで総裁選を実施しても岸田氏が勝てるかどうか分からない」(麻生派)との見方も出てきた。

このため麻生氏の判断に注目が集まっている。複数の自民党幹部によると、麻生氏は安倍首相に対して、岸田氏では党内がまとまらないとの情勢分析を伝えたもよう。「現時点では石破氏・岸田氏両にらみだが、現実的判断に傾くのは時間の問題」(自民中堅)との観測も聞かれ、動向が注目される。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、新型コロナウイルス新規感染29人を確認 5日ぶり30人下回る
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.


20200630issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ノーベル物理学賞、米国拠点の3氏に 次世代量子技術

ワールド

米ホワイトハウス、政府閉鎖中の職員給与保証せず=ア

ワールド

アングル:超長期金利、30年債入札無難で上昇一服 

ワールド

イスラエル軍、ガザを陸海空から攻撃 ハマス襲撃から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 2
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレクションを受け取った男性、大困惑も「驚きの価値」が?
  • 3
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿すると「腎臓の検査を」のコメントが、一体なぜ?
  • 4
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 5
    一番お金のかかる「趣味」とは? この習慣を持ったら…
  • 6
    筋肉が育つだけでは動けない...「爆発力」を支える「…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃の「オーラの違い」が話題…
  • 8
    監視カメラが捉えた隣人の「あり得ない行動」...子供…
  • 9
    「不気味すぎる」「昨日までなかった...」ホテルの天…
  • 10
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 7
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 8
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 9
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 10
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中