最新記事

検証:日本モデル

「新しい生活様式を自分で実践しますか」専門家会議に参加している公衆衛生学者に聞いた

ADAPTING TO THE NEW NORMAL

2020年6月4日(木)12時10分
西澤真理子(リスク管理・コミュニケーションコンサルタント)

ISSEI KATO-REUTERS

<新型コロナ対策として打ち出された「新しい生活様式」。まるで校則のように細かいが、専門家自身はどう行動しているのか。国際医療福祉大学の和田耕治教授にその意図を尋ねた。本誌「検証:日本モデル」特集より>

「新しい生活様式」――ニューノーマル(新しい日常生活)を送る上でのバイブルのようなリストが5月のゴールデンウイーク中に発表され、大きな反響を呼んだ。

20200609issue_cover200.jpg筆者の最初の印象は「校則のように細かい」だ。無期限で行動を指示されているような感じがするし、全て守ろうとすると生活が成り立たなくなる人もいるだろう。例えば「食事」の「対面ではなく横並びで座ろう」。あらゆる飲食店をカウンター式にしろとでも言うのだろうか。

もちろん、これだけ細かいのには理由があるのだろう。そこで、専門家会議に出席している国際医療福祉大学の和田耕治教授(公衆衛生学)に意図するところを聞いてみた。

「新しい生活様式は、自分を守り相手を守る思いやりに満ちた行動の指標として使って欲しい。押し付けにならないように例として示した」。リストに込めた思いは、「皆が頭を使い、コロナリスクと付き合うために自分なりに試してみること」。

新型コロナウイルスの流行は一過性ではない。「ニューノーマル」を強いられる窮屈な生活は2年続くかもしれない。そうであるなら無理がなく、実践できるものでないとならない。窮屈過ぎても、理想が高過ぎてもとても、息が続かない。

実際、和田教授自身はリストにある理想を全て守ることができているのだろうか。そう気になったのは、筆者には2011年の福島原発事故の際の経験があるからだ。福島県飯舘村で村のリスクコミュニケーションアドバイザーを務めた際、住民がよく口にしたのが「先生たちはいいよね。日帰りで東京に帰るんだもんね」「孫を連れて飯舘村に住めるの? 孫を連れて来られないならば信じられない」

当時、役所の若手職員も含め集まった若い人たちと何度か飲み会を行った。専門家が住民にしているアドバイスを「本当に」自分たちで実践するか否かで、専門家の信頼度が計られていたとも言える。筆者がリスクコミュニケーションの専門家として感じるのは、こちらが信頼を獲得できるかどうかは、専門家が自らどう実践するかに懸かっている。

和田によると、自分がどう行動するかの判断の根拠は自分と相手の「お互いの関係、流行時期、状況」によると言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中