最新記事

ベネズエラ

ロンドンの地下金庫に眠る金塊 ベネズエラ「2人の大統領」の争奪戦は司法の場へ

2020年6月28日(日)13時35分

英中銀の地下金庫に預けている金塊の管理権を巡り、ベネズエラのマドュロ大統領とグアイド暫定大統領(写真)が司法の場で争おうとしている。3月9日、首都カラカスで撮影(2020年 ロイター/Manaure Quintero)

英国の中央銀行であるイングランド銀行の地下金庫には、各国が預ける膨大な金塊が眠る。その一部、19億米ドル相当(約2000億円)の延べ棒を巡り、ベネズエラの2つの陣営が争っている。

マドゥロ大統領は、同政権下にある中央銀行の資産だと主張する。一方、米国などが大統領に認定する野党指導者グアイド氏は、この資産を管理すべきは自分であると言う。英政府がベネズエラの正統な指導者として認めているのは、グアイド氏だ。

どちらの主張に正当性があるか、英国の裁判所がこのほど審理を開始する。ベネズエラ中央銀行が、この資産へのアクセスを認めるよう英中銀を提訴したことを受けてのものだ。裁判官が5月28日に示した決定によると、何かしらの結論が出るのは8月あるいは9月になりそうだ。

マドゥロ側は金を売却してコロナ対策費と言うが......

減少を続けるマドゥロ左派政権の海外資産のなかで、この金はかなりの部分を占める。ベネズエラ中銀の弁護士によれば、金の大半は売却して新型コロナウイルス対応の資金に充てられる予定だという。6年間にわたる経済危機で揺らぐベネズエラの医療システムは、新型コロナで崩壊の危機に瀕している。

しかし、野党側は中銀の主張を否定する。マドゥロ政権はこの資産を友好国に売却するつもりなのだと、グアイド氏陣営は指摘する(政権側の弁護士はこれを否定)。過去2年間、マドゥロ政権が必要な外貨を調達するため、ベネズエラ国内の金約30トンを国外に売却していることが、関係者と中銀のデータから明らかになっている。

2018年5月の大統領選を違憲と主張し、19年1月にマドゥロ政権の正統性を否定して暫定大統領就任を宣言したグアイド氏側は、今回有利な判決が出れば他国にも影響を与え、諸外国の銀行口座に凍結されている50億ドルを含め、より多くのベネズエラ資産を掌握できるようになるものと期待している。

グアイド氏の主任弁護士(海外担当)を務めるホセ・イグナシオ・エルナンデス氏は、「裁判所からの承認が得られれば、非常に重要な前例となることは疑いの余地がない」と話す。


【話題の記事】
・コロナに感染して免疫ができたら再度感染することはない?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・今年は海やプールで泳いでもいいのか?──検証
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中