最新記事

新型コロナウイルス

経済再開が早過ぎた?パーティーに湧くアメリカ

Houston Mayor Says 'We're Not Equipped' to Fight Surge as Virus Cases Rise

2020年5月26日(火)19時26分
ジェイソン・レモン

経済再開が始まったアメリカ各都市は戦没将兵追悼記念日の週末、人で溢れ返った(写真は5月23日、メリーランド州オーシャンシティ) Kevin Lamarque-REUTERS

<新型コロナウイルスをいまだにジョークと思っている人々がいる、とヒューストン市長>

米テキサス州は5月22日から経済活動再開の第2段階に入ったが、州都ヒューストンはとたんに人で溢れ、この調子では感染者がどれだけ急増するかわからない、と市長が悲鳴を上げている。

ヒューストンのシルベスター・ターナー市長は5月24日、バーやクラブでの新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、消防保安官(警察権も持つ公認の法執行官)が公衆衛生対策の遵守状況を取り締まることになる、と述べた。バーやクラブは、収容人数を25%以下に抑えるのが営業再開の条件だ。

ターナーは、5月25日の戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)を含む週末に撮影された動画や写真を見て失望した、と述べた。飲食店は満員でソーシャル・ディスタンシング(社会的距離戦略)どころか、マスクさえしていない客ばかりだったのだ。

人口2900万のテキサス州ではこれまでに、新型コロナウイルス感染者が5万6000人を超え、死者も1533人に上っている。5月23日の新規感染者数が1060人。16日の1801人からは減ったものの、ほぼ1000人台で横這いが続いている。なかでもヒューストンが位置するハリス郡の感染者数は1万900人を超え、州最多となっている。

「これほどの多くの感染者には対応できない」と、ターナーは記者会見で言った。「まだ態勢ができていない」

耳を貸さない市民もいる

「いまだに新型コロナウイルスをジョークだと考えている人がいるが、これはジョークではない。経済は再開した。テキサス州はその第2段階にあり、バーやレストラン、理容室などが営業を始めた」

経済再開とともに、感染対策を置き去りにした市民も多いようだ。ヒューストン消防署長サミュエル・ペーニャによれば、5月22日からの週末には、コロナ対策違反の苦情が殺到したという。

ソーシャルメディアやニュースサイトは、混雑したバーやクラブ、プールで撮影された写真や動画で溢れた。メキシコ湾のギャルベストン島でビーチパトロールをしているピーター・デイビスは地元テレビ局に対し、「人がたくさんいて、誰もマスクをしていない」と語った。

テキサス州のグレッグ・アボット知事は5月18日、経済再開に向けた第2段階への移行を発令した。5月22日から、飲食店の収容人数制限を定員の25%から50%までに引き上げるほか、バーも定員の25%以下なら営業再開が許可された。

しかしターナーは、耳を貸さない市民もいるのだと嘆く。一方で、強制的なやり方もしたくない、という。

「残念ながら、このウイルスは、すし詰めの店内でマスクもしていなければ、どんどん感染が広まってしまう可能性がある。やがて手に負えなくなってしまうまで」

(翻訳:ガリレオ)

20200602issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中