最新記事

感染症対策

日本の「生ぬるい」新型コロナ対応がうまくいっている不思議

Japan’s Halfhearted Coronavirus Measures Are Working Anyway

2020年5月15日(金)16時50分
ウィリアム・スポサト(ジャーナリスト)

ソーシャル・ディスタンスも、個人の善意と、少々の社会的制裁に委ねられている。飲食店は、アルコールの提供は午後7時まで、そして午後8時には閉店するように(丁重に)要請された。職場のストレスを晴らすために終電まで飲んで過ごすことに慣れた、日本のサラリーマンにとってダメージは大きかっただろう。

「社会的接触の7~8割の削減」という野心的な目標が掲げられた。そしてデータ分析によると、この数値目標はかなりの割合で達成された。ゴールデン・ウィーク恒例の帰省ラッシュも今年はかなりの程度回避された。新幹線を運行するJR各社によると、今年の連休中の新幹線の乗車率は5%程度にとどまり、例年の乗車率105%と比較すると乗客は大幅に減少した。

日本は自らを法治国家、そして公衆衛生の意識が高い社会と見ているが、国民全員がまじめに感染予防策を実行したわけでもない。大きな懸念材料となったのは、人が密集しがちなパチンコ店だ。ほとんどのパチンコ店は営業を自粛したが、営業を続けた店舗もあった。各自治体は営業を続ける店舗の名前を公表する対抗措置を取ったが、逆に宣伝になって数少ない営業店舗に入ろうとする客が長い行列を作った。

医療関係者に差別

しかし全体としては、相手を気遣い、人との距離を取り、握手を避け、清潔を心掛ける日本の文化は、数値で図ることが困難だとしても、感染者数を抑える上で大きな役割を果たしたようだ。

ただ残念なことに、医療従事者や感染患者に対する差別的な言動という、日本文化のよくない側面も表面化している。第一線の医療現場で奮闘する従事者が世界各国で称賛されているのとは対照的に、日本では看護師などの医療従事者が、差別的な言動を受けたり、保育所で子どもを拒否されたり、感染を恐れる人たちから拒絶されたりしている。

感染者数の減少傾向を今後も継続させるため、安倍は緊急事態宣言を5月末まで継続すると発表した。しかし国民の間に「自粛疲れ」が高まっていることを考慮し、いくつかの要請を緩和した。公園や公共施設は、今後段階的に利用が可能となる。東京や大阪の周辺などまだ新規の感染者数が多い都道府県を除く地域では、外出制限は緩和される。各企業は感染防止策を講じながら、経済活動を再開する。

世界のどこの国でもそうだが、日本にとって最大の懸案は、感染危機を引き起こさずに安全に行動制限を解除できるかどうかだ。そして、そもそも日本がなぜ諸外国のような感染危機にいたらなかったのかという大きな疑問もまだ残っている。

From Foreign Policy Magazine

20050519issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。

ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請84.7万件、前週から改善

ビジネス

米マクドナルド、第4四半期決算は予想下回る 欧州の

ビジネス

中国、今年の成長率目標設定を見送る可能性 債務を懸

ビジネス

欧州の9銀行、コロナ禍で昨年資本バッファー取り崩し

MAGAZINE

特集:バイデン 2つの選択

2021年2月 2日号(1/26発売)

新大統領が狙うのはトランプ派との融和か責任追及か オバマ路線は継承するのか見直すのか

人気ランキング

  • 1

    26歳で死んだソン・ユジョン、売れないと悩んでいた

  • 2

    トランプが新党を立ち上げればアメリカの第2政党になる

  • 3

    「メキシコのキム・カーダシアン」と呼ばれるモデル、豊尻手術失敗で亡くなっていた

  • 4

    オバマのお気に入りは「エリート」な日本製の水性ボ…

  • 5

    「それは私の仕事ではありません」 ワークマンはそん…

  • 6

    日本の首相の言葉はどうして心に響かないのか?

  • 7

    「小学校の図書室に歴史修正主義の本があります」ど…

  • 8

    ナワリヌイ釈放要求デモはロシアをどう変えたか

  • 9

    韓国の次世代空母導入で変わる北東アジアの勢力図

  • 10

    熱烈なBTSファンの娘に、親として言いたいこと

  • 1

    バイデン新大統領はとんでもない貧乏くじを引いてしまった

  • 2

    あらゆる動物の急所食いちぎり去勢も? 地上最凶の動物「ラーテル」の正体

  • 3

    「メキシコのキム・カーダシアン」と呼ばれるモデル、豊尻手術失敗で亡くなっていた

  • 4

    全てが期待以上のバイデン就任式に感じる1つの「疑念」

  • 5

    バイデン、トランプから「非常に寛大な」手紙受け取る

  • 6

    去りゆくトランプにグレタがキツいお返し「とても幸…

  • 7

    共和党重鎮マコネル、弾劾裁判の準備にトランプに2週…

  • 8

    自らの恩赦見送ったトランプ、今後待ち受ける民事・刑…

  • 9

    イラン最高指導者ハメネイ師関連サイト、トランプを…

  • 10

    未来を見通すインパクト投資は、なぜテスラではなく…

  • 1

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?

  • 2

    バイデン新大統領はとんでもない貧乏くじを引いてしまった

  • 3

    あらゆる動物の急所食いちぎり去勢も? 地上最凶の動物「ラーテル」の正体

  • 4

    「メキシコのキム・カーダシアン」と呼ばれるモデル…

  • 5

    マジックマッシュルームを静脈注射した男性が多臓器…

  • 6

    世界で「嫌われる国」中国が好きな国、嫌いな国は?

  • 7

    アイルランド母子施設で子供9000人死亡、発覚したき…

  • 8

    ビットコイン暴落、投資家は「全てを失う覚悟を」(…

  • 9

    北極の成層圏突然昇温により寒波襲来のおそれ......2…

  • 10

    全てが期待以上のバイデン就任式に感じる1つの「疑念」

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

2021年 最新 証券会社ランキング 投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月