最新記事

日本人が知らない 休み方・休ませ方

日本人は本当の「休み方」を知らない──変われないのはなぜか

HOW WILL THE VIRUS CHANGE WORK?

2020年5月14日(木)10時40分
宇佐美里圭、森田優介(本誌記者)

ドイツでは対照的に、学校は午前中だけ。午後は時間が空くので、幼い頃から自由時間の使い方を考える習慣ができる。自ずと時間に対する意識が高まり、それが社会人になってからの働き方にもつながっていく。

「タスク型」雇用の時代へ

それでは一体、私たちはどうしたらいいのだろうか。専門家らが口をそろえるのは「まずは経営者が変わるしかない」ということだ。思い切った経営判断をするしかない。

もっとも、就業規則や法律で定めれば全てが解決するわけでもない。私たちが新たに直面しているのは、ジョブ型でもメンバーシップ型でもない、新たな形の雇用社会だと濱口は警鐘を鳴らす。

「いま世界で起きているのは『タスク型』雇用社会の出現」と、濱口は言う。「配車サービスのウーバーをはじめ、ジョブの中にある一つ一つのタスクを単発仕事(ギグ)として請け負う『ギグワーカー』が出てきたことで、これまでの安定したジョブ型の雇用も急速に壊れつつある」

タスク型になれば、もはや休みも失業も、労災という概念もないというわけだ。世界は産業革命以前の時代に戻りつつある、という危機感を持っている専門家が多い。

しかも目下、世界は新型コロナウイルスの影響で未曾有の雇用危機に陥っている。現在、外出制限下にある人は世界合計で39億人に上るとも言われており、アメリカでは3月下旬の2週間で約1000万人が失業保険を申請した。そんななか、世界中でリモートワーカーも増えているが、それに伴い今後「働く」と「休む」のバランスはどう変化していくのだろうか。

働き方や休み方を考える上で忘れてはいけないのは、ユートピアに見える北欧もほんの30〜40年前は日本と同じような状況にあったということだ。社会的変容を迫られて法律や制度を変え、それによって人々の価値観が変わってきた。

実は私たちの考える文化や習慣というものはそれほど強固なわけではない。2~3年もたてば新しい習慣が「常識」になり、10年もたてばすっかり「文化」として定着する。文化が違うから、習慣が違うから、歴史が違うから、人口構成が違うから......というのは「変われない」理由にはならない。

「変われなかったら、滅びるだけ」。立命館アジア太平洋大学の出口は何度もそう繰り返した。「歴史を見れば分かる。変化に対応できなかった文明が滅んだのではない。どこも改革はしている。滅んだのは、スピードが遅かったせいだ」

<2020年4月21日号「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集より>

【関連記事】リモートワークで「在宅社畜」中国の働き方は日本よりマシ?
【関連記事】休暇「2週間×年4回」+夏休み2カ月はなぜ可能なのか?

20050519issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。

20200421issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7、エネ供給支援へ必要な措置講じる用意 外相声明

ワールド

トランプ氏、米空港にICE捜査官派遣と警告 予算巡

ワールド

トランプ氏、イランに48時間以内のホルムズ開放求め

ワールド

イラン、イスラエルの核施設付近攻撃 初めて長距離ミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの場でにじんだ「私的発信」
  • 4
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 10
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中