最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナに立ち向かう「マイクロネーション」の独立精神を見よ

The Intangible Spirit of Micronations

2020年5月8日(金)16時40分
アンドルー・ウェーレン

エキセントリックな建国精神が「国家」の意味を問い直す(写真はモローシア共和国) REPUBLIC OF MOLOSSIA

<各地に点在する未承認の「ミニ独立国家」、コロナ危機にもアイデンティティーは揺らがない>

既に世界210カ国・地域に広まっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。国際社会から承認されていない「マイクロネーション」も、国家としてこの危機に立ち向かっている。

マイクロネーションとは、個人などが独立国家を名乗る小規模なコミュニティーだ。私有地を領土と主張したり、独自の通貨や切手を発行したりする国もあれば、書類やインターネット上だけで存在する国もある。

彼らの建国の理念は、時に私たちの想像を超える。しかし、風変わりな個人主義者や、財産権を主張する政治オタクだけでなく、賢明な国際感覚を持つ建国者もいる。

「国家」とはいえ、医療資源の統制や警察による社会的距離の監視とは無縁。だが、集団的なアイデンティティーという強固な基盤がある。米国内外の5つのマイクロネーションに、外交ルート(電子メール)を介して話を聞いた。

モローシア共和国

領土はカリフォルニア州とネバダ州の私有地約2万5500平方メートル。建国は1977年。1999年から国を率いるケビン・ボー大統領の下、現代国家の多くの機能を備える。

独自の通貨バロラ(チョコレートチップクッキーの生地の価格と連動)や郵便サービス、国立公園、火山研究所、ロケット計画、鉄道などを擁し、インターネットラジオやニューズレターで公共サービスを提供している。

ただし、医療などの社会資源は、モローシアを取り囲む大規模な国(アメリカ)に依存し、対価として対外援助(税金)を拠出している。

「国民の大半はロックダウン(都市封鎖)下にあり、国外の就労場所には2〜3人で移動する。まだ国民に感染者はいない。ロックダウンと社会的距離の基本対策が効果を上げている証拠だ」と、ボーは語る。「状況がこれ以上悪化しないでほしい。モローシアだけでなく、国境を接するアメリカでも、さらには世界全体でも」

タロッサ王国

タロッサ王国はウィスコンシン州ミルウォーキー東部に領土を持つ。1979年に当時14歳のロバート・ベン・マディソンが自宅の寝室で主権国家の独立を宣言し、初代国王に就任した。

インターネットで成功したマイクロネーションの1つであり、「参加」する国民が世界中に約100人いる。二院制の議会、内閣、複数の政党があり、独自の言語を持つ。

ダフネ・ローレス首相によると、タロッサの政治と市民生活は、ほぼ完全にオンライン化されている。ローレスはメールの最後をタロッサ語の格言で結んだ。オンライン辞書によれば次のような意味らしい。「生き延びる唯一の希望は、ホワイトハウスのオレンジ・ゴブリン(小鬼)を追い払うことだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中