最新記事

感染症

ベルギーの死亡率が世界一高いといわれる理由、ポルトガルが低い理由......

2020年4月28日(火)13時20分
モーゲンスタン陽子

ベルギー・ブリュッセルの医療スタッフ REUTERS/Yves Herman

<世界一死亡率が高いとされるベルギー、また欧州の中で死亡率がかなり低いポルトガル、その理由は何なのか......>

新型コロナウィルスに関して、ポルトガルの人口100万人あたりの死亡率は約89で(27日現在)、ヨーロッパの中ではかなり低い。国境を接するのは、欧州で最悪の被害を受けているスペインだ。距離的にも文化的にも近しい両国で何が明暗を分ける原因となったのだろうか。

一方、18日に米ホワイトハウスより「死亡率が世界一高い国」と名指しされたベルギーは、介護施設での原因不明の死亡なども件数に含めるなど他国とは異なるアプローチをとっているため、このような比較は公平ではないと抗議している。

早期アクションには与野党間合意が必須

ポルトガルの人口はスペインの約4分の1だ。スペインの感染者数は世界で2番目、ヨーロッパで最多の22万6千人以上(27日現在)だが、ポルトガルは2万3千人ほどでその10%、さらに死者数になるとスペインの2万3千人に対して903人で約4%にすぎない。

morgenstan0427b.jpg参照:World meters/coronavirus


ポルトガルはヨーロッパで最も遅く新型コロナ感染者が確認された国だ。1月31日に確認されたスペインより1か月以上あとの3月2日のことだった。ポルトガルでは発見の12日後に早くも学校閉鎖、14日後に緊急事態宣言が出されている。その時点での感染者数は100人強。スペインがロックダウンに踏み切ったのはポルトガルとほぼ同時期だったが、すでに5,000人以上の感染者と133人の死者が出ていた。

ポルトガルの知識人たちは、政府の迅速な決断と行動による早期ロックダウンにより、被害が最小限に抑えられたと考えている。また、ポルトガルの最有力紙の1つ、パブリコのディレクターであるマニュエル・カバロ氏は「その種の『共同体精神』的な反応を得るには、各政党、政府、大統領間の意見の一致が非常に重要である」とアルジャジーラに語っている。

現在、ポルトガルではアントニオ・コスタ首相率いる中道左派の社会党が与党である。野党第一党の社会民主党党首ルイ・リオは「政府を困らせるためだけに国を困らせるようなことはしない」と語っている。

これは、スペインの状況と対照的だ。スペインでは、国民の87%が野党は与党批判をやめるべきだと考えているにもかかわらず、与野党間の溝は深まるばかりだ。野党第一党の中道右派の国民党は、左派の社会労働党とポデモスの連立政権に対し批判を繰り返している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

クックFRB理事、トランプ氏による解任巡り提訴へ 

ワールド

イーライリリーの経口肥満症薬、2型糖尿病患者で体重

ビジネス

積極利下げの用意、経済の下振れ顕在化なら=マン英中

ビジネス

スズキ、EV強化へ80億ドル投資 インドの生産体制
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    トランプ、ウクライナのパイプライン攻撃に激怒...和…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中