最新記事

トルクメニスタン

人前で「コロナ」と言ったりマスクをするだけで逮捕される国とは

One Nation Banned The Word 'Coronavirus' to Suppress Pandemic Information

2020年4月1日(水)16時45分
ジェイソン・レモン

ロシアのメドベージェフ首相(左)と歩くベルディムハメドフ大統領(中央)(トルクメンバシ、2009年)REUTERS/Mikhail Klimentyev

<国内の感染を認めないばかりか、コロナウイルスという言葉の使用まで禁じた「世界一」の言論弾圧国家>

拡大を続ける新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を抑え込もうと奮闘する世界をよそに、このウイルスに関する情報を封じ込めることに躍起の指導者がいる。

中央アジア南西部に位置するトルクメニスタンの政府は、「コロナウイルス」という言葉を使用禁止にした。マスクをつけたり、公衆の面前でこのパンデミック(世界的大流行)について話をしたりした人は逮捕されていると、国境なき記者団が報告している。同国の国営メディアは、コロナウイルスという言葉を放送したり出版することを禁じられている。職場や病院、学校に配布される政府の保健に関するパンフレットからも、コロナウイルスの情報は削除されている。

「トルクメニスタン政府は、コロナウイルスに関する情報を根こそぎ排除するという過激な政策を採っている。独裁的と言われるがここまでとは」と、国境なき記者団の東欧および中央アジア部会の責任者を務めるジャンヌ・キャブリエは3月31日付の声明で述べた。「グルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領によるこの情報統制は、(感染の)リスクが高いトルクメニスタン市民の命を危険にさらしている」

独立系のニュースサイトで、トルクメニスタン国内では閲覧を禁止されている「クロニクルズ・オブ・トルクメニスタン」によれば、同国政府は公式見解として、国内にコロナウイルスの感染例はないと主張している。ラジオ・フリー・ヨーロッパなど海外のトルクメン語版サービス「ラジオ・アザトルク」が、トルクメニスタンで複数の感染例を伝えているにも関わらずだ。

長い国境を接する隣国がイラン

ラジオ・フリー・ヨーロッパはまた3月第4週に、トルクメニスタンの首都アシガバットで食料品の価格が急騰していると伝えた。これは同国政府が首都への往来を制限したためで、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるための対策とみられる。トルクメニスタンと長大な国境を接する隣国のイランは、新型コロナウイルスの感染者および死者数で世界最悪の国の一つで、トルクメニスタンに感染が広がっていても不思議はない。

トルクメニスタン政府は、新型コロナウイルス感染症に関する情報を統制する一方で、感染を食い止める手も打っている。クロニクルズ・オブ・トルクメニスタンによると、すべてのスポーツイベント、スポーツクラブ、レストラン、カフェは3月24日以降、中止ないし閉鎖されているという。加えて、アフガニスタンとの国境に接する小さな町、セルヘタバットは封鎖され、3月25日以降、町への出入りが禁じられている。

<参考記事>ブラジル大統領ロックダウンを拒否「どうせ誰もがいつかは死ぬ」
<参考記事>BCGワクチンの効果を検証する動きが広がる 新型コロナウイルス拡大防止に

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中