最新記事

東京五輪

サニブラウンが明かした「五輪延期」への決意

LET THE ATHLETES SPEAK

2020年4月7日(火)17時00分
及川彩子(在米スポーツライター)

五輪は特別かつ崇高──。そんな言葉をIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長はこれまで何度、免罪符のように使ってきたのだろう。しかし今回ばかりはそれは通用しなかった。

3月中旬にIOCと安倍晋三首相が予定どおり五輪を行うと発表すると、スポーツ界から反発の声が、SNS風に言うと「大炎上」した。バッハは選手たちがどんな犠牲を払っても、どんな状況でも五輪に参加すると考えていたのだろう。

しかし従順な「飼い犬」だったはずの選手たちは、この局面で牙をむいた。

ロンドン、リオ両五輪の陸上三段跳びを連覇したクリスチャン・テイラー(アメリカ)は、自ら代表を務める陸上選手ユニオンのネットワークを使い、世界各国の4000選手にアンケートを実施。78%が延期を希望し、87%が新型コロナウイルスの流行が五輪準備に悪影響を及ぼしている、という回答結果をIOCに送り付けた。

「満足に練習ができないから延期を希望したわけじゃない。世界各国の政府が『家にいろ』と言っているのに、僕たちがウイルスへの恐怖と闘いながら練習しなきゃいけない状況は間違っている。IOCは傲慢過ぎる」とテイラーは訴える。

IOCの延期決定に先立って、カナダやオーストラリアの五輪委員会などが、五輪が延期されない場合、参加を見合わせるという発表をした。

リオ五輪で50キロ競歩4位だったカナダのエバン・ダンフィーは「2月中旬頃から五輪開催は厳しいと感じていたので、カナダ五輪委員会の決断を誇らしく思った。スポーツ選手の前に僕らは『よい市民』でなければならない」と言う。

延期を好意的に受け止める選手が多いなか、競技引退や五輪挑戦を断念した選手も少なからず存在する。東京五輪後にプロ転向の意思を示していたあるアメリカのアマチュアボクシング選手は、延期を受けて今季中のプロ転向をほのめかしている。

ほかにも東京五輪まで現役を続行するかどうかは今季終了後に考えたい、と話すベテラン選手は多い。東京五輪までなんとか、と歯を食いしばってやってきた選手にとって、あと1年という数字は重くのしかかる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中